年金も低く、貯蓄も少なければ老後は困窮してしまう

もうひとつ、将来大きな問題となると懸念されるのが、低年金・低貯蓄に起因する老後の困窮だ。現在は経済的に自立できている人の中にも、将来のための貯蓄をする余裕はないというケースも多いだろう。それに加えて、これまで無業や非正規雇用だった期間が長いほど、払い込んできた厚生年金保険料が少なく、その分将来支給される老齢厚生年金の額も少なくなる。要するに、現役時代の収入が低いともらえる年金も少なくなるのだ。

日本の社会保険制度が逆進的であるという指摘は従来からなされてきた(例えば酒井2020)。2016年までは、パートタイム労働者は、週あたりの所定内労働時間が正社員の4分の3(おおむね30時間)以上でなければ被用者保険(会社で入る健康保険)の加入対象ではなかった。

道路沿いの壁に寄りかかる女性
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国民年金に40年加入しても、月額6万6250円しかもらえない

勤め先の社会保険に入れない場合は、国民健康保険や国民年金に加入する必要があるが、雇用主負担分がないため、国民健康保険のほうが被用者保険よりも、同じ所得の人が払う保険料が高い。

国民年金保険料も所得によらず定額であるため、所得が低いほど負担率が高くなる。しかも、現役時代に国民年金にしか加入していないと、将来もらえる年金額は加入期間のみに依存して決まる老齢基礎年金のみになる。2024年現在の老齢基礎年金支給額は、40年以上加入していた人で月額6万6250円である。基礎年金だけではとても生活できないことがわかるだろう。