食物繊維が善玉菌の栄養源になる

こうした腸内細菌は無数の酵素を持っており、それが消化の過程で腸を通過するものにさまざまな作用を及ぼします。その中には、ジャガイモに含まれるある成分に働きかけ、ビタミンB1として機能するように変換してくれるものも含まれているということが、最近になってわかってきたのです。つまり、ジャガイモを食べれば食べるほど、腸内で作られるビタミンB1も増えていくということです。

腸内環境のバランスは、長期間の食生活に影響される面が強く、人種や住んでいる地域などにも大きく左右されます。標準的な日本人の腸内細菌においては本来、善玉菌であるビフィズス菌の占める割合が大きかったのですが、近年それが減少し、逆にバクテロイデスやクロストリジウムなどの悪玉菌が増加していると聞きます。

では、自分自身の腸内の善玉菌を育てるにはどうすればいいのでしょうか。ここで主役を演じるのもやはり、野菜なのです。野菜に大量に含まれる食物繊維が、腸内の善玉菌の栄養源になるということが、最近の研究でわかってきたのです。

食物繊維自体から栄養を摂ることはできない

そもそもわれわれ哺乳類は、食物繊維を自力では分解することができません。食物繊維はセルロースからできていますが、これは本来、植物が自らの細胞を守るために作り出した強靭なプロテクターです。

一石英一郎『予防医学の名医が教える すごい野菜の話』(飛鳥新社)

人類は食物繊維自体から栄養を摂ることはできないのですが、植物の繊維を摂取することが、人類の健康維持にとっても重要だということははっきりと言えます。

なぜかといえば、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が、腸内でそれをエサにして増殖し、結果として腸内環境を整えることにつながるからです。また、食物繊維自体が腸内の有害物質を吸着し、便と一緒に排出されるといった形で、腸内の「掃除屋」の働きも担っていることがわかっています。

だから積極的に食物繊維を摂るようにすれば、それだけ善玉菌の餌となり、腸内環境を本当の意味で整えることができるようになるのです。野菜を食べるべき理由は、そこにもあるということです。

コメントby SERENDIP

著者は食生活における野菜摂取の重要性を強調してはいるが、ベジタリアンやヴィーガンになることを勧めているわけではない。肉食のメリットについてもしっかりと述べている。ただし肉類の過剰摂取は腸内環境を荒らすため、「野菜は、肉の倍以上食べましょう」あたりが妥当と考えているそうだ。さらに、野菜については多種類を取り混ぜて食することが好ましいとしている。食事を「楽しむ」という視点からも、さまざまな種類の野菜の味や食感を、選り好みをせずに試してみることが、心身のウェルビーイングにつながるのではないだろうか。

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