ホモ・サピエンスが生き延び、ネアンデルタール人が滅んだ理由

ホモ・サピエンスは、太古にサルから進化したヒト属の中で唯一、現代まで命脈を保っている種族です。しかし太古から続く歴史の中では、ホモ・サピエンス以外にも、この地上で繁殖し、そして滅んでいったさまざまなヒト属がいました。ネアンデルタール人もそのひとつです。

順序からいうと、ネアンデルタール人が絶滅した後に、現生人類であるホモ・サピエンスが登場したかのように捉えられがちですが、実際にはこの両者は、かなり長い期間、並行して存在していました。

両者の命運を分かつ最大の決め手となったのは、食生活の違いだったのではないかと私は考えています。ネアンデルタール人が登場した時代のヨーロッパは寒冷な気候で、荒れ地が広がっていたため、彼らの食生活は、肉食に偏る傾向が強かったと考えられています。一方、ホモ・サピエンスは雑食性であり、食べるものの3分の2は野菜だったといいます。

ホモ・サピエンスは、植物成分を摂取することによって、免疫力を高めていたと考えられます。つまり、ホモ・サピエンスの方がネアンデルタール人よりも、疫病等に強かったのではないかと私は考えています。

植物が作り出す成分の種類は100万はあると計算できる

植物が生み出す成分の種類は、全部でいったいどれくらいあるのでしょうか。植物が生み出す成分とは、トマトに含まれるリコピン、ナスやサツマイモに含まれるアントシアニンといった化学成分のことです。

特定の植物種だけに含まれる固有の化学成分は、一種あたり平均して4.7個であると推定されています。これに植物種の推定総数である20万をかけ合わせるだけでも、ざっと100万。つまり、植物が作り出す成分の種類は、100万はあるという計算になります。

新鮮な野菜
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そもそも植物細胞は、シアノバクテリアという細菌が真核細胞に取り込まれ、葉緑体に進化して細胞内で共生するようになったことで誕生したと見られています。

葉緑体は、太陽光を浴びることで大気中の二酸化炭素を固定し、糖質と酸素を作り出します。植物は、それに加えて根から土中の養分を吸い上げて暮らしているわけですが、限りあるリソースを生長に投資して、自らも大きくならなければならない中、吸い上げた養分や光合成で作り出した糖分は、効率よく配分する必要があります。

そこで植物は、自らが生み出す成分のひとつひとつに、できるだけ多くの機能を持たせるようにしてきました。ひとつの成分が多機能であればあるほど、身を守るコストは少なくて済むからです。