「成功」への唯一の障害は“マスク自身”

マスクがすべてを好転させる可能性はまだある。テスラでも、スペースXでも実際にやり遂げてきた。Xで再びそれをやってのけるのに必要な資金も確実に持っている。

1年目は惨劇続きで終わったが、マスクは1年という短い時間軸で行動する人物ではない。もしかしたら、すべてが次の大逆転ストーリーの始まりに過ぎないのかもしれない。だが、ほとんどの日は、そのような成功物語へとつながる道を阻んでいる唯一の障害が、マスク自身であるように感じられるのだ。

カート・ワグナー(原著)、鈴木ファストアーベント理恵(翻訳)『TwitterからXへ 世界から青い鳥が消えた日』(翔泳社)

「イーロンを間近で見て、良いところも悪いところも、醜いところも含めて、たくさんのことを学んだ」と書いたのはエスター・クロフォードだ。マスクが求めたプロダクト改良の締め切りに間に合わせようと、オフィスの床上で寝袋にくるまって眠った当時のプロダクト担当幹部である(ちなみに彼女はその数カ月後、コスト削減の一環として実施された人員整理で解雇の対象となった)。

「彼の豪胆さ、情熱、そしてストーリーテリングには感動を覚えます。でも、プロセスと共感の欠如は見ていて痛々しいほどです」

「イーロンは、物理学をベースにした難しい問題と格闘する上では、優れた才能を有しています」と彼女は続ける。「ですが、人と人のつながりやコミュニケーションを促すプロダクトには、それとは異なるタイプの社会的知性や感情的知性が必要なのです」

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