トランプが介入しても、ウクライナ戦争は1日で終わらない
「トランプが再選すれば、ウクライナ戦争は1日で終わる」という発言は、大胆だが非現実的であると専門家たちは口を揃えて断言する。トランプ2.0政権がこの戦争を終結させるには、複雑な国際的条件を考慮しなければいけない。
考えられるのは次の3つのシナリオだ。
1.アメリカとEUがウクライナから撤退し、ウクライナが単独でロシアに対抗する。この場合、ウクライナはロシア本土への攻撃を続け、長期化する内戦状態に陥る。
2.アメリカが引き続きウクライナ支援を継続し、ロシアの不安定化を図る。このシナリオでは、アメリカが和平交渉を進める仲介役を担う可能性が高い。
3.アメリカが関与を縮小し、EUや日本が支援を拡大する形で戦争を続行させる。
ポーランドのヴィスワ大学バーバラ・クラティウク助教授は、ウクライナ支援に慎重態度を見せる超タカ派のマイク・ウォルツ氏を国家安全保障担当に起用する方針はEU、特に東欧にとって問題になる可能性が高いと言う。
「アメリカがウクライナ支援を撤回すれば、ロシアの立場が強化されるだけでなく、国際法秩序も大きく揺らぐ恐れがある一方で、撤回によりEUがアメリカの支援を当てにすることなく、自らの軍事力と安全保障を強化する上で必要な後押しとなるかもしれない」(クラティウク助教授)
さらに、「もしアメリカがウクライナの支援を取り下げる前例ができると、領土問題を抱える東アジア全体に影響を及ぼす」(前同)と推測する。ロシア、中国、北朝鮮に囲まれた日本にとっても、アメリカのウクライナ関与は大きな意味をもつ。
加えて、NATOからの脱退をちらつかせる戦略も注目すべき点だ。トランプ2.0は、NATO加盟国に防衛費の増額を求めることで、負担の公平化を実現しようとしている。この動きがアメリカとヨーロッパの関係にどのような影響を及ぼすかは、今後の国際情勢を左右する重要な要素となるだろう。
今年数カ月間、東欧で研究をした前出のナギ教授は次のように言う。
「ウクライナ周辺国の研究者たちは、アメリカやEUがウクライナ防衛への支援を突然打ち切れば、戦争はロシア本土まで拡大し、ロシアとウクライナはますます不安定化・暴力化する、と考えているようだ」
ただ、実際は支援打ち切りにより、ロシアやウクライナがエネルギーや食糧を世界に供給できなくなるから、EUとアメリカ、日本も結局ウクライナ戦争から逃れられない、という。