高収入の子どもとは「世帯分離」を行う
さて国保料を下げる5つめは、特に親子で同居している際に有利になる「世帯分離」の申請だ。世帯分離とは“家族の縁を切る”というものではなく、生計を異にしていれば世帯は別ということ(私の場合なら離れて暮らす社会人の子どもがいるが、親子の縁を切ったわけではないものの世帯は別である)。
特に世帯分離をしたほうがメリットがあるケースとは「高収入と低収入がいる世帯(親子)」だ。前出の太田氏が、45歳の息子(年収900万円)と70歳の親(年金収入130万円)の2人世帯(2人とも国保加入者)をモデルに教えてくれた。
息子は、年収900万円-210万円(経費)=所得690万円
70歳の親は、年金収入130万円-120万円(公的年金等控除)-15万円(高齢者特別控除)=マイナス5万円
となると、世帯所得690万円になるので、減額基準にはあてはまらない。例として親は応益割の全額5万円を払うことになる。
「ところがこの世帯で、世帯分離をすれば息子の保険料には変化がありませんが、親の保険料は応益割の7割が減額になり、約1万6000円の支払いで済むのです」(太田氏)
ちなみに病院に入院した際の食事代も、所得区分で金額が異なるため、世帯分離をすることで安くなる。
一方で、2人とも低収入の場合は、世帯分離をするのに注意を要する。2人世帯なら非課税世帯なのに、世帯分離をすることで課税世帯になってしまうかもしれないからだ。また家族内で2人が「要支援・要介護」になった場合も、世帯分離をすると高額介護サービス費の上限がそれぞれに設定されるのでデメリットに。世帯分離の申請は居住地の自治体窓口で「世帯分離をしたい」と相談すればOK。届け出の書類名は、世帯変更届、住民異動届などさまざまなので気をつけよう。
改めて国保料を下げる方法とは、会社を退職した後に“どういった道を選ぶのか”につながることだ。仕事を続けるのか続けないのか。続ける場合は、新しい就職先を探すのか、今の職場でアルバイトや業務委託など雇用形態を変えて残るのか。このまま家族と生計を一にするのか。目先の1、2年よりもっと長い視点で考えたい。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年9月13日号)の一部を再編集したものです。