しかしスムーズに流れがつくれたとしても、喋り手の気持ちがネックになって、ウケる話がウケないこともある。これは前項でふれたような「面白く思われたい」という過剰な自信、「失敗したらどうしよう」という不安、そして緊張がトークにほころびを与えるからだ。しかし、プロの芸人だって、全員が全員、強いハートを持っているわけではない。彼らは緊張や不安を「慣れ」によって克服しているのである。

もし会社で話すことがハードルが高いのであれば、家族、友達、恋人の前で一度話してみる。身近な人間であれば失敗しても傷つかないし、「長い」「つまらない」と言われたら、その意見を参考に話を微調整していく。そうやって快心の話ができたときに初めて、取引先や上司に話せばいいのである。

人から見られることに苦手意識を持っている人には、イメージトレーニングを勧めたい。やり方は簡単で、電車で向かい側に座っている人を見ながら、もしくは映画館で一番前まで行って客席を振り返りながら、「今からここで喋る自分」を想像してみるのだ。私もプレゼンを控えたとき、こうすることがある。最初は結構緊張するが、目の前にいるのは普通の人で、その視線を怖く感じるのは所詮、自分の思い込みなのだと気づく。

矛盾するようだが、「そんなにウケなくてもいい」という割り切りも必要だ。その場が少しでも和んでくれたらいいなぐらいの気持ちで臨み、聞き手である上司や取引先に「空気を読んで、気を使ってくれたんだ」と伝わればいいのだ。ウケること以上に、その後に待っている仕事が大事なのだから。

(構成=鈴木 工)
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