公的機関の見解をチェック
線虫がん検査以外も、日本ではすでに「アミノインデックス」や「サリバチェッカー」といった、全身のがんリスクがわかると称する複数がん早期発見検査が有料で提供されています。
アミノインデックスは血液中のアミノ酸濃度バランスから、サリバチェッカーは唾液中のさまざまな代謝産物から、がんのリスクがわかるとうたっています。それぞれ個別にみると興味深い検査方法ではあり、研究を進めてほしいのですが、やはりまだ検診としての有効性が証明されたものは一つもありません。がん検診の対象となるような症状のない人たちを対象にした検診性能を評価する大規模な研究も行われていません。
すでにお金という対価を取って検査を提供している企業にしてみたら、「自社の検査の性能に否定的な結果が出るかもしれない研究」を行わない方向へインセンティブが働きます。わざわざ手間や資金をかけて何千人もを対象にした研究を行わなくても利益が出るのですから、必要ありません。
こうした事情によって、実社会における検査性能、がん死亡率を低減する効果について十分な裏付けがないまま、漫然と検査が続けられてしまう状況が生まれます。たとえ第三者が否定的な研究を行っても、企業側はそれを無視したり、否定的な見解を提示するだけで済ませることができるわけです。こうした企業の動きが、採血一つで済むがん検診の未来を遠ざけているともいえます。がん検診は、企業の謳い文句に惑わされず、公的機関の見解を確認したうえで受けるのが賢明だといえるでしょう。