高度経済成長期には利権に食い込む“反社”も暗躍

歴史の荒波の中でたびたび危機に直面するも、神戸の街は、生き延びるための変化を続けてきた。しかし、高度経済成長期の都市の変化には代償がつきまとった。

当時、宅地造成をめぐる詐欺事件が発生し、ずさんな工事が人命を危険にさらした。大規模な土砂崩れも発生し、多くの命が奪われた。光が濃いほど闇も深い。“港湾”“土建”の利権に食い込む反社会勢力が“高度成長”したのもこの時だった。

そして、変化の代償は、未来にまで深刻な影を落とす可能性が出ている。ニュータウンの高齢化だ。かつて新しかった街は、“オールド・ニュータウン”と呼ばれるようになった。

“郊外”が人口減少するということ、それはとりもなおさず、都市部への人口集中が続けば郊外の衰退に拍車がかかり、やがては都市機能を維持できなくなるという、これまで誰も解決したことがない難題である。

そこで市が取り組んでいるのが、市内を“面”で捉えた再開発だ。三宮は国際都市神戸の象徴として、商業施設やオフィスを新たに整備。現在、駅前では複数の大規模プロジェクトが進行中だ。そして、人口減少の危機に直面している郊外の駅周辺は、多様な世代が生活できる場としてリノベーションする計画となっている。

面で捉えた神戸の再開発(出所=『人口減少時代の再開発』)p.203

点ではなく、“面”の再開発を行う前提となったのが、市内全体に広がる鉄道網である。これまで人々の生活に根付いてきた、この既存インフラを軸として地域全体を捉え直し、都市としてのバランスを維持していこうとしている。

既存のインフラを積極的に活用

久元市長は、「街全体のビジョンをつくる役割は、自治体の使命」として、次のように語った。

「人口減少時代のまちづくりは、新たなインフラ投資が必要な面もありますが、既に行われてきた投資、既に存在しているインフラ、これをいかに活用するかが非常に大事です。特に大都市において、神戸も開港以来150年余り、戦前からさまざまな投資が行われ、蓄積され、相当なインフラ資産を有しています。これをいかにうまく活用するのか、それらを適切にメンテナンスしてできるだけ長く賢く使っていきたい」

「バランスの取れたまちづくりをしていく。その際は神戸が戦前からつくり続けてきた鉄道インフラを賢く使うことです。鉄道網が発達していますから、郊外の主要な駅をいくつか選定をして、ここを思い切ってリノベーションしていく」