より「マシな結果」だった石破首相の誕生

石破首相については、総裁選翌日の朝日新聞と産経新聞が足並みをそろえて「女系天皇に理解を示す石破氏」(朝日)、「前例のない『女系天皇』を排除しない考え方を示した」(産経)と報じていた。これはおそらく、総裁選の候補者同士の討論の中で小林鷹之候補から「女系天皇を否定しないのか」と問われたのに対して、「大事なのはいかにして国民統合の象徴の皇室をお守りしていくか」という答え方をした場面(9月13日)などを念頭においた記事だろう。

また「石破茂首相誕生で女性天皇に関する議論が急加速か」(『女性セブン』10月24・31日号)といった観測も見られる。

しかし私は以前、皇位継承問題をテーマに取り上げた共同討議で、石破氏とご一緒したことがある。その時の発言の様子では、女性天皇・女系天皇(※)にとくに前向きな印象は持たなかった。

もちろん、総裁選の決戦投票で争った高市早苗衆院議員と比べた場合、より柔軟な姿勢とは言えるだろう。皇位継承問題に対してブレーキをかけ続けた安倍晋三元首相の後継者を任じる高市氏の政治スタンスから考えると、おそらく①②のプランをそのまま制度化する方向で、無理やり決着を図ろうとするのではないだろうか。

そうした、ほとんど最悪のコースを避けられる可能性がわずかでも生まれたという意味では、石破首相の登場は、よりマシな結果だったといえる。皇位継承問題への知識も関心も、他の総裁候補だった議員らより持っているように見える。

ただし、よく知られているように党内基盤はいたって脆弱ぜいじゃく。そのために、党内の「男系男子」維持に固執する勢力への配慮が欠かせないだろう。「個人として男系男子で継承されるべきだと考えている」(産経新聞10月17日付)という発言もしている。したがって、過剰な期待は禁物ではないか。

※女性天皇・女系天皇:女性天皇は、女性の天皇を指すのに対し、女系天皇は、本人の性別に関係なく、母親が天皇であるなど、母方に天皇の血筋を持つ天皇のことを指す。たとえば敬宮殿下が即位される場合は、天皇陛下の血統に基づくので、「男系の女性天皇」となり、次にもし敬宮殿下のお子様が皇位を受け継がれるとしたら、その方は女性天皇である母親の血筋によって即位されるから、ご本人の性別に関係なく「女系の天皇」ということになる。