家賃3万円、農作業に疲れたら横になって…
“寝そべり族”が増加する中、2022年に中国政府は飲食のデリバリーなどギグワーカー、ライブ配信などの増加を支援し、若者の柔軟な就労と消費を押し上げようとした。しかし、その効果は十分ではなかった。中国若年層の間で、“青年養老院”が人気化したのはその裏返しといえるだろう。
青年養老院は、寝そべり族の若者に親と離れた生活環境、同じような悩みを抱える人と共同で農作業やカラオケなどを楽しむ環境を提供する。一月あたり1500元(3万円)程度で滞在でき、自給自足に近い生活を送るようだ。北京など大都市だけでなく内陸部の農村でも青年養老院は増えている。
SNSに出ている青年養老院の生活風景の記載を見ると、日中は庭の手入れをし、ハンモックに横になって仲間同士で悩みなどを語り合う。夜は、仲間と食事を準備しキャンプファイヤーを囲む。報道に出てくる就職活動に励む若者の写真と比較すると、青年養老院の人たちの表情にはある種のゆとりが感じられるとの指摘もある。
大卒者は昨年比で21万人も増えているが…
熾烈な受験競争に勝ち残り、就職を目指したがうまくいかなかった。就職したが激務に耐えられなかった。バーンアウト(燃え尽き症候群)した若者向けの安価な憩いの場というのが、青年養老院の実体なのかもしれない。
2023年6月、中国の16~24歳の失業率は21.3%に達した。2023年12月、就活学生を含まない方法で公表した失業率は14.9%、2024年8月は18.8%だ。経済全体での失業率上昇(2023年12月の5.1%から8月の5.3%)に比べ、若年層の失業増加は鮮明だ。
その根本にあるのは、労働力需給のミスマッチといえるだろう。中国では、大学卒業者の数が増加傾向にある。2022年、大卒者数は1000万人を超えた。2024年の卒業者数は1179万人、前年から21万人増の見通しである。
コロナ禍以前であれば、IT先端分野や金融業界での就業を希望する新卒者は多かった。産業別にみた中国GDP構成比は、第1次が約7%、第2次(製造業など)は約38%、第3次(ITなど)は約55%だ。経済に占める第3次産業の比率上昇で、サービス関連分野の就業増は自然な変化といえる。