「鼻の形が悪いのもお祖母ちゃんの遺伝!」
白柳さんが5歳になった頃、母親は再び働き始めるが、教育関係の仕事に恵まれず、仕方なく団体職員になった。
ところが母親は、職場でパワハラにあっていたようだ。
「小学生の頃、母に仕事の愚痴をこぼされたことがあるのですが、私がなんとかして解決してあげたいという気持ちから、『そんなに嫌な課長なら、もっと上の人に言いつけたらいい!』『仕事休んじゃおうよ!』などとアドバイスしたところ、案の定『無理に決まってるじゃない!』とヒステリックにキレられました。それでも母が心配だった私は涙目で、『じゃあ、私がその課長を呪い殺すから名前教えて』と言ったところ、珍しく母がふわっと笑い、『ありがとう』と言って頭を撫でてくれたんです。この笑顔が、私が覚えている唯一の純粋な母の笑顔でした」
母親は基本、イライラした顔、疲れた顔をしていて、いつもため息をついていた。見かねた白柳さんが、
「家事は私がやるから、お母さんは休んでて!」
と気遣っても、必ず、
「そんなこと言っても私がやらなきゃ」
と言いながら休もうとせず、結局疲れたりストレスが溜まったりして、子どもたちにぶつける。
「母から父や祖母の愚痴を聞かされる一方で、『あなたの太い脚はお父さんそっくり! 生まれつき視力が悪いのも鼻の形が悪いのもお祖母ちゃんの遺伝! 本当に可哀想な子』と忌々しく言われ続けたせいで、『お母さんが嫌いなお父さんとお祖母ちゃんにそっくりな私も、お母さんは嫌いなんだろうか?』と思えて、すごく悲しかったです」
母親から愚痴を聞かされるのも、ストレスをぶつけられるのも、弟より小柳さんの方が多かった。習い事や塾にも、弟より多く通わされた。
その理由を母親にたずねると、
「あなたは顔が良くないから、せめて勉強や運動ができないとお嫁に行けない」
と告げられた。
「とてもショックでした。顔面コンプレックスは今も続いています。『私はがんばらないと存在意義がない』いう潜在意識ができ上がり、今も悪影響を及ぼし続けていると思います」
母親は、白柳さんが好きな習い事を突然他のものに変えたり、「あの子と遊んじゃいけない」と友だちに関しても過度に干渉したりした。