ハイハイができない子どもが増えている

「スマホ育児」は子どもたちにさまざまな影響を与えています。

本書でも書きましたが、未就学児の子どもたちが、体育座りやしゃがむことができなくなっているといいます。体幹が鍛えられていないため、そのまま後ろや横に倒れてしまう。

原因として、「ハイハイをしない子が増えた」と取材した先生が挙げていたのが印象的でした。部屋が狭かったり、親が忙しくて十分な見守りができなかったりすると、赤ちゃんは自由にハイハイできません。ハイハイって、実は、正しい二足歩行や将来の身体活動の基盤となる全身の筋肉やバランス感覚を育てる大事な成育過程なんですが、その過程が抜けてしまう。

写真=iStock.com/Prostock-Studio
※写真はイメージです

「禁止しようがしまいがスマホ・生成AI利用は進んでいく」

「スマホ育児」にはさまざまな反響がありました。

言語の本質』を書かれた言語学者の今井むつみ先生は「書かれていることは、私も、なんとなく感じていたことです」と感想を寄せてくださり、嬉しかったです。今井先生は生成AIの利用が広がる今日このごろ、生成AIを学校現場でどう使うべきかの文科省のガイドライン作成に参画されているそうです。

今後の未来として「スマホの時と同様、文科省が推奨しようがしまいが、学校が禁じようと禁じまいと、子どもたちの生成AI使用は進むでしょう。私たちは、それによって、子どもたちが、そして社会がどう変化するのか、これから目撃していくことになります。

いいこともあると思いますが、本書で書かれている問題がさらに増長することを懸念しています」とありました。スマホの問題を生成AIに拡大して考えておられるわけです。

同時に本の中で、「今の子どもをひとくくりにして、自分の世代より劣っているとは思わない」と書いたことに共感してくれていました。

本の中で書いた子どもたちは早ければ数年で社会に入ってきます。子どもたちの能力を認めた上で、この社会に欠けているものはなにかを見極めて、意図をもってそれを補完する機会をつくっていく。そして、子どもたちが自立するのに必要な力を身に付けさせる。それが大切なのだと思います。

「その視点こそが、今、もっとも必要なことで、大人が生成AIに右往左往する前に、そこをしっかり押さえてほしい」と声をかけてくださって、励まされる思いでした。