なぜ30人の組織>50人の組織なのか
組織論を語るうえで、これから無視できなくなるだろう数字が“30人”です。一般論として、これまで1人のリーダーが直接的にマネジメントできる人数は最大50人と言われてきました。社員100人の会社なら、社長1人で全員を直接統率するのは難しい。
組織としてのパフォーマンスを最大化したければ、上限50人ずつの2チームに分け、2人の現場リーダーを立ててマネジメントする必要がありました。ところが最近は50人でも統率が取れなくなり、組織として効率的に動ける上限の人数が減りつつあります。
100人なら、30人前後の3チームが理想。チームの人数がそれ以上になると、リーダーが優秀でもマネジメントしきれなくなります。
原因は個性重視の学校教育です。自分らしさを重視した結果、協調性に欠ける子供が増えて、それがそのまま大人になってしまったのです。実は学校もかつては50人学級があたりまえでした。
しかし集団行動が苦手な子供が続出して、先生がクラスをまとめきれなくなっていった。その結果が30~40人の少人数編成というわけです。
こうした傾向は、管理教育が疑問視された1980年代ごろから始まっています。そのころに教育を受けた世代が、いま企業の現場にいます。その世代が優先するのは、チームワークより自分らしさ。
このタイプの部下が増えれば、リーダーが統率できる人数が減っていくのは当然。いわゆるゆとり世代の入社も2010年から始まったので、この傾向はますます顕著になるでしょう。
従来は「年上の部下は扱いづらい」が常識でした。しかし下の世代ほど自分らしさを重視する傾向があることを考えると、いまや「年上の部下のほうが、フォロワーシップがあっていい」という時代に突入しているのかもしれませんね。
※すべて雑誌掲載当時
巣鴨高校卒。早稲田大学卒業後、大手進学塾にて最上位コースを指導。その後、株式会社エルカミノを設立し、出版、教育事業を行う。2008年公開の映画デスノート『L change the WorLd』で数理トリックの制作を担当。著書に『絶妙な「数字で考える」技術』。