日本の立場でニュースを発信するはずが…
この「国際放送」は国内向けの放送とまったく意味合いが違う。テレビとラジオそれぞれで海外に向けて放送されているもので、その一部は総務大臣の要請を受けて行う「要請放送」と呼ばれ費用も国から出ている。国民に向けて行う通常の報道とは違う役割も持たされており、外国に向けて日本についての理解を促す意図も含んでいる。
そんな国際放送で、よりによって中国の立場を主張する放送をしてしまったのは、あってはならないことだ。それほど大勢が聞いているわけではないともよく言われるのだが、そういう問題でもないだろう。日本の立場で発するべき放送が、中国に入れ替わってしまうとは、どうやっても取り返しのつかない不祥事だ。
3日後の8月22日、NHKの稲葉延雄会長は、自民党の会合に出向いて謝罪した。そして26日には夕方の総合テレビでも謝罪。政権にも国民にも謝りまくった形だ。
9月10日には調査報告書を提出するとともに、会長ら4人が役員報酬50%を1カ月自主返納、そして担当理事・傍田賢治氏の辞任も発表した。他に5人の職員が減給などの処分、外部スタッフと業務委託契約を結んでいた関連会社の取締役2人も役員報酬の30%を1カ月自主返納となった。
唯一、潔い「辞任」がひっくり返された
この時、会長らの処分が軽いなとも思ったが、担当理事の辞任は重く受け止めた。ここだけずいぶん厳しいが、自分の判断で辞めるから「辞任」なのだろう。潔いと感じた。
11日には総務省がこの件でNHKに注意し、再発防止策の徹底とその遵守状況の公表を求める行政処分を行なっている。
会長があちこち謝罪し、総務省が行政処分して、この件はおしまいかと思われた。
ところが、まずその国際放送で、9月25日に前日放送したニュースを再び放送するトラブルが起こった。8月の不適切放送に比べると小さなことではあるが、再発防止に努めるはずが何をやっているのかと思った。
そこに今度は、元理事の復職だ。NHKは反省してないし、二度と不祥事を起こさない覚悟もないとしか思えない。
自民党に会長が謝罪しに行き、自分たちは報酬自主返納だが担当理事は辞任ということで、拳を下ろしてもらった形だ。江戸時代で言えば、不祥事を幕府に報告し、責任がある老中を切腹させたと伝えたのに、しばらくしたら切腹したはずの老中が別の役目を張り切って始めていたようなものだ。幕府を謀るとは何事じゃ! そう言われても仕方ない。