顧客が何を望んでいるかがわかっていない

コンサルティングの効用③
内側からはわからない“ズレ”を外からの視点で矯正する

日本企業の場合、「会社の中」のことに関しては、社員はじつによく知っている。でも、「会社の外」のこと、世の中のことになると意外と知らない。

たとえば自分の会社の顧客が、どんな商品を望んでいるか?

こんな基本的なことは、社員であれば知っていて当然と考える。ところが、日本の会社では、当の社員が気づいていない場合が少なくない。

それは日本の企業が、構造的にエンドユーザーとの接点が希薄だからだ。顧客に商品が行く前に問屋があり、卸があり、そこから各店舗に商品が渡ってようやく消費者の手に渡る。顧客の反応を直接見たり聞いたりできないから、エンドユーザーが何を欲しているか、何を望んでいるかが見えていない。

人材が欧米に比べると、比較的固定しているのも大きいだろう。日本企業の終身雇用制は崩れて久しく、人材の流動化は以前よりも高くなっている。とは言っても、欧米に比べると転職する人間はまだまだ少ない。

アメリカなどの場合は、業界内で同業他社にどんどん転職するけれど、日本でそれをやると裏切り者扱いされてしまう。たとえばエンジン設計をやっている人間がトヨタから日産に移るということはあまり考えられない。

やはり農耕民族である日本人は、どこかに自分の根っこをしっかりとおろして仕事をする方が合っているのかもしれない。

気がつくと社内の常識が社外の非常識に

そのような風土の中で会社勤めが長くなるほど、思考は内向きになっていく。会社の中のことはよく知っているが、外のことからはどんどん隔絶され、気がつくと社内の常識が社外の非常識になってしまうなんてことが起きる。

津田久資『本物のコンサルを選ぶ技術』(クロスメディア・パブリッシング)

このような状況の中で、社内の人間だけでものを考えていると、自分たちでは気がつかない「ズレ」が出てくるものだ。

気がついたとしても発言しにくい雰囲気がある。

そこで、外からの風が大きな効果をもたらすことになる。

腕の良いコンサルタントが来て、その点を客観的に指摘して分析する。自分たちが思いもしなかったズレや縛りがあることに気がつくと同時に、そこから自由になることで一気に視野が広がり、思考の枠が広がる。この付加価値は、大変大きなものがあると思う。

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