「強制的にパンク」は高速道路では難しい

しかし、この件は逆走対策技術についての公募に含まれていない。近いものとして公募されたのが「路面埋込型ブレード」だが、これは仕組みこそ「トラフィックスパイク」「スパイク・ストリップ」などと似ているが、路面から出ているのは突起物であり、逆走車両に対して衝撃を与えるだけのもの。これだと乗り越えて通過することは可能で、ウェッジハンプと大きな違いは見受けられない。

路面埋込型ブレード(国土交通省の資料より)

では、どうして「トラフィックスパイク」「スパイク・ストリップ」は採用されないのか。最大の理由は、この技術はあくまで低速で対応するもので、それは一般道での路地進入を阻止する役割でしかないとされているからだ。しかも、頻繁に車両が行き交う高速道路では耐久性にも課題は残る。もっと言えば、強制的にパンクさせる行為が日本では馴染まないとの考えが底辺にあるのではないか。

ならば、どうすれば逆走は防げるのか。個人的に提案したいのは、高速の出入口やサービス/パーキングエリアにおけるQRコードを活用した逆走防止策だ。これを読み取ることでエンジンの出力を抑えるか、停止させることで逆走防止につなげるのだ。QRコードは一部を読み取るだけで認識できるため、多少の汚れにも強く、屋外の設置にも十分対応できると思う。

すでに多くの車両には自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)が搭載され、2021年以降の新型車からは搭載が義務化されてもいる。これに使うカメラを活用することで対応はできるのではないだろうか。

「行き過ぎても申告すれば正規料金で戻れる」ことを周知すべき

それと、出口を誤って通過してしまった時の特別対応をもっとPRすべきではないか。これは、「行き過ぎてしまったと気付いたら、次の料金所へ進み、そこで一般レーンで行き過ぎてしまった理由を料金所で申し出ることで、本来の料金所までの通行料金で済む特別対応を行う」というもの。高速道路会社ではこの対応をホームページにも記載しているが、これをどれだけの人が認知しているだろうか。

写真=iStock.com/gyro
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先日、身内で不幸があり、その時に集まった高齢ドライバーにこの特別対応の話をしてみると、知っていたのは元警察官だけだった。大半の人が出口を通過したらその分の料金は支払うことになると思い込んでいるのだ。これでは本来の出口に戻りたくなる気持ちが生まれても不思議ではない。

いずれにしても、逆走事案は高速道路だけでも年間で200件以上も発生している。逆走は死亡事故にもつながる可能性が高い迷惑行為そのものだ。なんとしても根絶すべき事案であることは間違いない。

今、各ドライバーが考えられる逆走に対する自己防衛策は、なるべく追い越し車線は走らないか、走ったとしても逆走車がいる可能性をいつも念頭に置いておくことぐらいだろうか。一日も早い逆走の根絶を願ってやまない。

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