高齢者は「片側2車線道路」に慣れていない

では、逆走する要因には何があるのだろうか。

まず考えられるのがドライバーの資質の問題だ。NEXCO東日本の資料には、逆走した人の68%が65歳以上の高齢者であることが示されている。加齢によって正しい状況判断ができにくくなることは考えられるし、一方で年齢が上がっても自分の運転に自信を持ち続ける人も少なくないと聞く。つまり、自信があるからこそ、逆走してもそれが誤りであることをなかなか自覚しない可能性もあるのだ。

特に高齢者は古い時代から運転の経験を積んだこともあり、そもそも複数車線の道路に不慣れな人も少なくない。つまり、片側2車線以上の追い越し車線を左側通行用の車線と勘違いしがちなのだ。これは一般道で多く見かける事例で、特に交差点での広い道路では右折する際に勘違いしやすい。本来なら中央分離帯の奥側に入るべきなのを手前で進入して反対車線を逆走してしまうのだ。

「物理的に逆走可能」なICが全国にある

特にデータが上がっているわけではないが、日本の高速道路でよく見かける、インターチェンジのある構造にも逆走へつながる問題が潜んでいるような気もしている。

逆走事故があった現場付近の黒磯板室IC。路面で色分けされ、「進入禁止」の看板もあるが、物理的には進入可能になっている。(Google Mapより)
逆走事故があった現場付近の黒磯板室IC。路面で色分けされ、「進入禁止」の看板もあるが、物理的には進入可能になっている。(Google Mapより)

冒頭に紹介した逆走事故が発生した場所の近くにある東北道の黒磯板室ICの状況を例に紹介すると、料金所を過ぎて、本線へ向かうと「東京」方面と「福島」方面への分岐点があるが、問題は東京方面へ向かったその先。ストリートビューで現場を確認すると、そこには「左折できません」「左折禁止」の警告標識と、路面のカラー舗装で東京方面へ進むように案内されてはいるものの、構造的には単純な「T字路」なので、行こうと思えば福島方面へと逆走して進むこともできるのだ。

実はこのような構造になっているインターチェンジは全国には数多くあり、私がよく利用する東関東自動車道の四街道ICも似た構造になっていて、その気になれば簡単に逆走できてしまう状況にある。要は、物理的に逆走できる構造をインターチェンジに作ってしまっているわけで、思い込みから間違えてしまう可能性は十分あると言っていいだろう。だからといって、このインターチェンジの構造を変えることがそう簡単ではないのも理解できる。