逆走事故はなぜなくならないのだろうか。モータージャーナリストの会田肇さんは「日本の高速道路のICは物理的に逆走可能な構造のものが多い。それ以上に、有料道路特有の『損したくない』という感情が逆走を生んでいる可能性がある」という――。
自動車事故の現場に駆け付けた消防士
写真=iStock.com/Tashi-Delek
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痛ましい逆走事故が相次いでいる

逆走事故が頻発している。

今年8月中旬、東北道において2日連続で逆走を起因とする事故が発生した。特に15日に那須塩原市付近で発生した軽ライトバンと乗用車が正面衝突した事故では、共に運転していた男性2人が死亡し、乗用車に乗っていた子ども2人が重傷を負うという痛ましい結果となった。

相次ぐ逆走はどうして発生するのか。また、どうすれば逆走を防ぐことはできるのかを考えてみたい。

この事故は8月15日に那須塩原市付近の東北道下り線で発生。報道によれば、軽ライトバンが東北道下り本線上をUターンして追い越し車線を逆走したことによって生じたと伝えられている。現場をGoogleマップのストリートビューで確認してみると、付近には「黒磯板室IC」があるが、よく見るとこの出口からは「黒磯PA」に向かうこともできるようになっている。ただし、黒磯PAに入ってしまうと黒磯板室ICから出られなくなってしまう。

この状況から推察すると、軽ライトバンのドライバーは、東北道下り線・黒磯板室ICから出ようとしていたのではないか。しかし、このドライバーはそのまま本線上をスルーしてしまったか、あるいは一旦は本線上から出口へと向かったものの、誤って黒磯PAへとクルマを進めてしまい、再び本線へと戻ってしまった可能性がある。

そして、目的の出口である黒磯板室ICから出たいという思いが先行し、一般道と同じ感覚でUターンして左側車線、つまり本線下り線の追い越し車線を逆走してしまったのではないだろうか。

高速道路の逆走件数はあまり減っていない

NEXCO東日本の資料によれば、高速道路における逆走事案発生件数は調査を始めた2015年をピークに、少しずつ減っていき、コロナ禍による行動制限もあって20年には激減した。しかし、翌21年に再び増加に転じ、23年には15年の約9割にまで達している。

また、この逆走が事故につながった件数は年度ごとにバラツキはあるが、2016年をピークにそこから23年は3割減少している状況にある。とはいえ、逆走がある限り、正面衝突の可能性は高く、その時の相対速度を考えればそれによって受けるダメージは甚大だ。