養子縁組で「身位」はどうなるのか

政府の有識者会議が令和3(2021)年に取りまとめた最終報告書では、皇族数の確保のために「養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする」という方法が挙げられている。

要するに今ある宮家を旧宮家の男子に継承していただこうという案だが、ここで着目したいのが、皇族の身位について「三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王」とすると定める現皇室典範の第6条である。

この規定に従えば、たとえば常陸宮殿下が養子を取られる場合、養子自身は形式的には昭和天皇の孫として親王になるが、その次代からは王となる。より傍流にあたる三笠宮家や高円宮家では、次代からどころか養子自身も、彬子女王殿下らと同じように王となる可能性が高い。

画像=共同通信社
皇室の構成

「悠仁天皇」のころには「王」ばかりになっている

前述の報告書には「法律により直接皇族とする」という方法も挙げられているが、皇籍離脱前には鎌倉時代後期に在位した後伏見天皇の子孫としての扱いだったことからすれば、この場合も王になるのが自然だ。

大正9(1920)年の「皇族の降下に関する施行準則」では、当時の伏見宮系皇族の共通祖先である邦家親王の子世代が「一世」とみなされた。今後の議論次第では、このように特例的に一世とみなして親王とする可能性もあるかもしれない。

しかし仮にそうなるとしても、今から60年、70年後のことになるであろう「悠仁天皇」の御代の末頃には、世代交代が進んで宮家の男子たちの身位はやはり王ばかりになっていると考えておいたほうがよいだろう。

もしも悠仁親王殿下の系統が続かなければ、身位が王にすぎない皇位継承者が現れる可能性が高い。これこそが、広い意味での「安定的な皇位継承」の不安要素として筆者が憂慮する点である。