将来の即位が見込まれる「王」の放置は避けたい
もちろん、大勢の王に対して際限なく親王宣下できる仕組みは採るべきではないし、かつての世襲親王家のように特定の宮家に親王号を用いる特権を半永久的に与えるというやり方も考えるべきではない。
皇位継承順位第5位までの男子には、実際の世数にかかわらず天皇の猶子という形で自動的に親王号が与えられる――というくらいが適切だろうか。なお、第5位までという範囲は、皇太子に加えて前述の四親王がいた時代を目安にしたものである。
歳費の範囲内で未来の天皇を育てるのは、親王ですら心もとない。そんな問題提起をしておきながら親王宣下を提案するというのもおかしな話だが、せめて将来の即位が見込まれる王がその身位のまま長く放置されることだけは避けたい。秋篠宮殿下が皇嗣になった時に増額されたことは今後の先例になるだろうが、それでは遅すぎる場合もあるはずだ。
一応、現行法制下においても王が親王になる道はある。「王が皇位を継承したときは、その兄弟姉妹たる王及び女王は、特にこれを親王及び内親王とする」と定める皇室典範第7条がそれだ。
しかし、これだと天皇自身はやはり王としての立場で即位に向けての準備をしなければならない。天皇の甥についても、先述の寛仁親王がそうだったように普通ならば親王であるところだが、この場合はどうやら王のままとされるようだ。
このことからも現代日本は、傍系皇族が即位することを理論上は想定しつつも、現実には傍系継承に対応できるシステムを十分に構築してこなかったといえる。
「男系か女系か」のほかにも議論すべきことはある
宮家という存在に対し、皇族としての公務の担い手という程度の役割しか求めないのならばそれでもいいのかもしれない。だが、万一の際に新天皇を出すという役割を期待するのであれば、国家百年の計として制度改革を議論すべきではないだろうか。
さて、ここまで旧宮家の皇籍復帰案に着目して書いてきた。読者の中には「女系天皇を認めれば傍系継承のことなんか考えずに済むだろうに」といった感想を抱かれた方もおられるかもしれない。
しかし、仮に女系天皇を認めたとしても、残念ながら天皇が常に1人以上の子を儲けられるわけではない。傍系継承は当然に起こりうるし、その場合には遠縁の王や女王が皇位継承者となることも十分にありえよう。
男系を堅持すべし、いや女系を容認すべし――。こんな風に皇位継承方法そのものをめぐる論争にどうしても流れてしまいがちだが、真の「安定的な皇位継承」を実現させるためには、それ以外にも考えられることはありそうだ。
成人された悠仁親王殿下がお妃を迎えられるのは、そう遠い未来のことではないかもしれない。だが、もしも男子がお生まれになったとしても、令和の御代のうちは王でしかない。そんな事態を回避するためにも、国会における幅広い議論を期待したい。