東京都の出生率が低いのは数字のマジック

実際は首都圏一極集中なのに、東京一極集中という用語が使われていることに関連して、東京都の出生率が低いことも誤解を生んでいるようだ。

厚生労働省の人口動態統計によれば、2023年の日本全体の合計特殊出生率は1.20、最も高いのは沖縄県の1.60で、最も低いのは東京都の0.99となっている。

しかしここには数字のマジックがある。

これは様々な研究者が指摘していることだが(例えば、ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏の論考「2021年/2000年 都道府県の『赤ちゃん数維持力』-圧倒的維持力の東京都・女性移動が生み出すエリア人口の未来-」など)、ある場所に40歳の既婚で子どもが2人いる女性が2人、25歳で未婚で子どものいない女性が2人いる場合は、単純計算で分子の子どもが4人、分母の女性が4人だから1人あたり子どもの数は1人になる。

この場合の出生率は1になる。

この状態から25歳の未婚女性1人が首都圏に引っ越すと、分子の子どもの数は変わらないが、分母の女性の人数が3人になり、1人あたり子どもの数は1.33になる。

そうなると出生率は1.33になる。

逆に東京が最初は同じ状態だったとして、そこに未婚女性が1人加わると、子どもの数が4人で、分母の女性の人数が5人になるため、一人あたり子どもの数は0.8になる。

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議論すべきは「日本全体の子どもの数を増やす」こと

実は地方の出生率が高く、東京の出生率が低いのは、こうした若い女性の移動が大きな要因になっている。

そして、首都圏に引っ越した女性のうちかなりの人たちが、首都圏で結婚して子どもをもうけるが、もし地方に留まっていたとして同じように結婚して子どもが生まれるかどうかわからない。

だとすれば、議論すべきなのは、都道府県ごとの出生率の高低ではなく、日本全体の子どもの数を増やすにはどうするか、という点だ。

その意味では、全国知事会での「人口や産業の集中を日本全体の人口減少に関連付けた主張は因果関係が不明確」という小池百合子東京都知事の発言はきちんと検証されるべきだろう。