間違い探しのように全体を見て違和感を探す

どういうことを研究するかというと、まずはそのピッチャーのクイックのタイムと牽制のタイムを計ります。次はそのピッチャーが1シーズンで連続牽制が何回まであったのか、セットに入ったらすぐに牽制するタイプか、セットから2秒以上経ったら牽制をしてこないタイプなのかを調べます。

その次にサインにうなずくときの首の動かし方、肩の呼吸の仕方、背中から感じる雰囲気などもチェック。さらに投球と一塁への牽制の映像を繰り返し見ます。間違い探しのような感覚で全体をまずはぼやっと見て、そこから違和感を見つけ出し、その違和感が何かを追究していきます。僕の場合はそうやって癖を探していました。

その他にもセットポジションのときの足幅の広さ、ユニフォームのシワの入り方などチェックするポイントはたくさんあるのですが、そうやって得た特徴、癖を対戦するピッチャー全員分のノートを作って、そこに書き込んでいました。ノートも一度書き込んだら終わりではなく、常に新しい情報を書き足しながら使っていました。

ちなみに1人のピッチャーの癖に気付くまでは、だいたい1時間もかからないくらいでした。

ユニフォームのズボンにシワが入ったら牽制してくる投手

癖が盗みやすかったピッチャーはソフトバンクで抑えをやっていたファルケンボーグ投手。牽制をしてくるときは1回首を下げて、上げてから投げるという癖を持っていたピッチャーでした。当時オリックスだった西勇輝投手(現阪神)も、ちょっとユニフォームがブカブカ気味だったのですが、ズボンにシワができたときは一塁に牽制をしてくる、できなかったときはしてこないという、シワの有り無しで判断をしていました。

癖を見抜くと当然良いスタートが切れるようになります。そうやって1、2度盗塁を決めると今度は相手バッテリーが「癖が盗まれている」と次の対戦では対策を講じてきます。前回まではあった癖がなくなっていることもあるのですが、そうなるとまた研究。ノートにも赤字が増えていきます。ピッチャーとバッターもそうだと思いますが、プロ野球という世界は研究と対策の繰り返しなのです。