日本は総選挙をにらんでの利上げ
一方、日本では9月19、20日に日銀の政策決定会合が開かれます。こちらは、次期首相を実質的に決める自民党総裁選の27日より前です。日銀としては2%台のインフレが続いていることや、何よりも金利ひいては金融を正常化することを考えれば、現状0.25%を上限としている政策金利を上げたいと思っているはずです。
しかし、日銀としては自民党総裁選前に政策金利を上昇させることで市場を混乱させたくないことや、現状も株価や円相場が比較的大きく動く日があり、先日日銀の内田眞一副総裁が「大きく相場が動く間は利上げをしない」と発言したことを考えれば、9月の利上げは難しいと考えられます。
また、日本の経済を概観すればそれほど悪くはないものの、不安材料も垣間見えるというところです。米国ほどの好調さはありません。
具体的には、実質GDPの伸び率は米国と違い、上がったり下がったりの状況で、また、経済の最前線にいて景気に敏感な人たち、たとえばタクシーの運転手、ホテルのフロントマン、中小企業経営者などを対象に内閣府が毎月調査をしている「街角景気(景気ウォッチャー調査)」では、良いか悪いかの基準となる50を切った状態がこのところ続いています。
一方、財務省調査の「法人企業統計」では、企業の営業利益は比較的順調に伸びていると言えます。こういう状況ですから、8月5日の暴落後の株価も、やや戻ったものの、神経質な動きをしています。
こうしたことを考えても日銀としては利上げのタイミングを慎重に見極めていると考えられます。
9月の後の日銀の政策決定会合は、10月30、31日ですが、次期首相は、総裁選後それほど長くない時期に衆議院を解散し、総選挙に持ち込むと考えられます。なぜなら現在の衆議院議員の任期が来年10月までで、そこまでには必ず選挙が必要なことと、そこまで待つとまたスキャンダルが出る恐れがあるからです。
そうすると、総選挙期間やあるいはその直前となる可能性が強く、日銀が10月末の政策決定会合での利上げに動くことは難しく、結局12月18、19日の今年最後の政策決定会合での利上げの可能性が高いと考えますが、これも総選挙の日程次第です。
そして大きな経済的変動がなければ、日銀は将来的には1%程度まで金利を上げたいと考えていると思われます。「中立金利」という考え方があり、これは、景気を過熱も冷やしもしない金利を指すのですが、日銀内部では1%程度が中立金利という考え方があり、それに短期金利をもっていくべきだと考えているのです。
いずれにしても、米国は利下げ、日本は利上げのトレンドがしばらく続きます。
そうすると、日米金利差が縮小するので、さらに円高に振れる可能性はあります。しかし、ここまで話したように、日本の経済は米国ほど強くないため、一本調子で金利を1%程度まで上昇させられるかは不明ですし、できたとしても、日銀はここで見たように選挙日程などを考慮しながらかなりの時間をかけて慎重に利上げを行っていくと考えられます。