脅かされかねない「放送の自主自律」

ことほどさように、国際放送は、特異な位置づけにあるといえる。

NHKが公共放送の生命線とする「自主自律」を声高に叫んでも、“電波テロ”事件を機に、政治による介入が強まることを危ぶむ識者は少なくない。

NHKは、「放送ガイドライン」で「憲法で保障された表現の自由のもと、正確で公平・公正な情報や豊かで良質な番組を幅広く提供し、健全な民主主義の発展と文化の向上に寄与する」「報道機関として不偏不党の立場を守り、番組編集の自由を確保し、何人からも干渉されない。ニュースや番組が、外からの圧力や働きかけによって左右されてはならない」とうたっている。

それだけに、国家の利益を代弁するような宣伝媒体となったら「国営放送」そのもので、NHKは「公共放送」「公共メディア」の看板を下ろさなくてはならなくなる。

写真=iStock.com/Davizro
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これまでに国際社会で築き上げてきた信頼は一挙に崩れてしまうだろう。

自民党の一部には、「国際放送をNHKから切り離し、国の直轄にすべき」という議論も出ている。NHKが言うことをきかないなら国営放送を作ってしまおうという話で、放送界全般に関わる重大事になりかねない。

このままでは「電波テロ」が繰り返される

NHKは、再発防止に向けて、編集体制が強固な国内放送と連携を深めていくというが、基本的な体制や布陣が変わらない限り、大きな変革は望めそうにない。

一般の視聴者が見聞きすることは少ない国際放送だが、“電波テロ”事件を奇貨として、「国際放送はどうあるべきか」というそもそも論に立ち返って再構築するところからスタートしなければならないのではないだろうか。

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