突然、「尖閣諸島は中国の領土」と言い放つ

NHKのラジオ国際放送で、衝撃的な“電波テロ”が起きた。

中国語のニュース番組で、ニュースを読んでいた外部スタッフの中国人が突然、「沖縄県の尖閣諸島は中国の領土」と発したのだ。日本政府の公的見解とは真逆の内容が、生放送中のニュース番組の中で公然と語られたのである。もちろん、原稿にはまったく書かれていない私見だった。前代未聞の事件勃発に、NHKは大混乱に陥った。

南西側から見たNHK放送センター
南西側から見たNHK放送センター(写真=Syced/CC-Zero/Wikimedia Commons

中国語での放送だけに事実関係の掌握に手間取り、公表した説明は二転三転。尖閣諸島の帰属をめぐるセンシティブな問題だけに、稲葉延雄会長はあちこちで「きわめて深刻な事態で、深くおわび申し上げる」と頭を下げまくった。

事態を収拾するため、当面、外国語ニュースの生放送は取り止め、すべて事前収録の録音放送にすることになり、既に一部導入しているAI音声の全面採用も急ぐことになった。過去にも同様の“電波テロ”が起きていた可能性を否定できず、膨大なチェック作業にもとりかかった。

9月10日には、「公共放送NHKの存在意義を揺るがす極めて深刻な事態」とする調査報告書を公表、国際放送の担当理事が責任をとって辞任、会長以下幹部役員4人は月額報酬の50%【1カ月分】を自主返納する事態に発展した。

だが、今回の“電波テロ”事件は、原因を探っていくと、国際放送をめぐるNHKの構造的な問題にたどりつくだけに、根は深い。国際放送の全面的な体制見直しのような抜本的改革をしない限り、同様の事件は再び起きかねない。

政治介入が強まることを危惧する声もあるだけに、小手先の弥縫びほう策にとどまらず、国際放送のあり方を考える契機にすべきではないだろうか。