新NISA口座で圧倒的に多く買われているのが、通称「オルカン」(eMAXIS Slim 全世界株式)をはじめとした外貨建て投資信託でした。財務省が月1回発表している「投資家部門別対外証券投資」によると、投資信託部門の買付額が、今年前半だけで6兆円を超えています。このままいけば、年間12兆~13兆円に達する勢いです。
一般の人にはこれがどれほどのものか、ピンとこないかもしれません。同部門の買付額は去年1年間で約4.5兆円でした。去年の買付額でもかなり多いと話題になったほどで、過去10年間の平均買付額は約3.5兆円でした。明らかに新NISAスタートの影響があり、東京外為市場に“新しい円の売り手”が誕生したに等しいインパクトです。
読者の中にも「オルカンを買っている」という人が多いのではないでしょうか。投資額は「月々○○円」と日本円で設定しますし、評価額も日本円で表示されますからオルカンを外貨建て資産と意識していない人もいるかもしれません。実際は、オルカンの中身は“世界の株式”ですから、毎月設定した投資額だけ日本円を売り、外国通貨を買い、外国株を買うというムーブが繰り返されているのです。大きな円安圧力になるはずです。
「オルカン」には日本株も含まれますが、比率は5.3%にすぎません。国別の構成で最も多いのは米国株で約61.6%。次いで日本、その次は英国3.5%、フランス2.7%、カナダ2.6%、スイス2.1%、ドイツ1.9%、インド1.8%、その他の国・地域が15.2%程度などとなっています。さらに言えば米国株でも3割近くが「マグニフィセント・セブン」(GAFAMにテスラとエヌビディアを加えた7社)です。(eMAXIS Slim 全世界株式の場合)。
特筆すべきは、「新NISA」で人気の外貨建ての投信の積み立ては、毎月一定額を機械的に買っていくため、日本円が“売られる一方”だということです。本格化した「貯蓄から投資へ」の流れに乗って、今後も新NISAの口座数や一口座あたりの積立額は増え続けていくでしょう。
現時点で年間120万円(月あたり10万円)の「つみたて投資枠」をフルに使っている人は、あまりいないでしょうが、直近の調査(24年1~3月期)を見ると月の積立額は平均で8万円を超えているそうです。スナップショットかもしれませんが、かなり積立投資は浸透してきている印象も受けます。今後も「外貨建て投信の積み立て」という投資スタイルが主流になり、円安圧力として効き続ける状況は継続するのではないでしょうか。