「ピンピンコロリ」でなくても幸せな長生きはできる

「生涯現役」という言葉がありますが、100年の生涯をまさに現役で過ごす人が増えているのは素晴らしいことです。アメリカの研究では110歳以上生きた人は、早く亡くなった人よりも人生の中で病気の期間が短いということも報告されているのです。これはいわゆる「ピンピンコロリ」に近い状態だといえます。

もちろん、そのような人たちは残念ながら今のところ一部でしかありません。体や認知機能に障害があったり、目や耳が悪かったりする人が多いのが現実で、私たちの調査では支障なく生活できるという意味で「自立している」人は18%だけでした。では「ピンピン」していることだけが幸せなのでしょうか?

注目しなければならないのは、「ピンピン」していない100歳の人たちが幸せかどうか、ということです。せっかく長生きしたのに日々の生活で幸せを感じられなければ、それはとても残念なことです。でも、私たちの調査では、身体機能が衰え自由度が低くなっていても、幸せだと感じている人が少なくないという結果が出ているのです。意外な結果と感じるかもしれませんが、これは事実です。「ピンピンコロリ」とはいかなくても、「フニャフニャスルリ」といけるかもしれない、私はそんな風に思うのです。

人はなぜ幸せを感じるのか、また幸せを感じるようになるにはどうしたらよいのか。それを明らかにすることは、私たちの幸せな老後を考える上で、大きな示唆を与えてくれるでしょう。

スーパー高齢者たちは病気になっていた期間が短い

現在、世界のさまざまな地域で100歳を超える人たちの調査が行われています。アメリカ北東部のニューイングランド地方で長年、100歳の研究をしているパールス先生が実施しているのは、100歳以上の人とその兄弟姉妹、そしてその子どもを対象にした長寿の秘密を探ろうという研究です。その研究では、「長生きしている人ほど不健康期間が短い」という報告が出ています。長く生きればその分だけ不健康な期間も増えると考えていた私にとっては、本当に信じられない、びっくりする報告でした。

データを見てみましょう(図表2)。このデータは、一般の高齢者、90歳未満で亡くなった人、90〜99歳で亡くなった人、100〜104歳で亡くなった人、そして105〜110歳で亡くなった人について病気にかかっていた期間を比較したものです。

図表2の下の図では、それぞれのグラフの横幅が病気であった期間を指しています。人生の中でどれくらい病気の期間があったかを見ると、年齢が高い人のほうがたしかに短い、つまり長寿者であればあるほど不健康な期間が短いという結果が出ています。

出所=『100歳は世界をどう見ているのか』(ポプラ新書)