「まごつき、取り乱している」焦燥のトランプ陣営

対するトランプ陣営は、焦燥の色を隠せない。英フィナンシャル・タイムズ紙は、民主党がヴァンス氏の数々の不適切な言動を引き合いに出し、氏を「奇妙な」人物として描こうとしていると報じている。

CNNは日本語版記事で、トランプ氏が「経験したことのない急速に変化する政治情勢にまごつき、取り乱しているように見える」と指摘。「悪意に満ちたメッセージや、人種差別的な侮辱、陰謀めいた攻撃」を繰り出して状況を取り繕っていると述べている。

こうした行動は支持者たちの目にすら非生産的に映っており、トランプ陣営としてはハリス氏の出鼻をくじく機会を完全に逸した格好だ。同じ共和党内からすら、戦略を改めるよう求める声が上がる。

共和党大会でスピーチするヴァンス氏(写真=Gage Skidmore/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

共和党の世論調査員のフランク・ランツ氏は、米CNNのインタビューで、「(政策上の)課題に焦点を当てれば、トランプは成功する可能性が高い。しかし、(候補者の人種など)属性に焦点を当てれば、ハリスが成功する可能性が高くなるだろう。なぜなら、人々は彼女をトランプよりも好んでいるからだ」と述べている。

バイデン氏は高齢が懸念材料となり、トランプ氏は極端な言動で避けられてきた。難しい選択を迫られていたアメリカ国民の前に、突如として米民主党からハリス氏という選択肢が登場。一挙に注目を集めた格好だ。

女性政治家たちを「子供のいない猫好きの女性」と揶揄

ハリス氏に対し、ヴァンス氏が優位を保てないのはなぜか。ヴァンス氏はある意味で、トランプ氏に似ている。衝動に駆られた失言が、随所で悪目立ちしているのだ。

2021年には、ハリス副大統領を含む民主党の政治家たちを「子供のいない猫好きの女性たち」と揶揄。女性蔑視だとして猛烈な批判に晒された。

米ABCニュースによるとヴァンス氏は、ハリス氏やピート・ブティジェッジ運輸長官、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員など、子供を持たない民主党の政治家たちを批判。「我々の国は、子供のいない猫好きの女性たちによって運営されている。彼女たちは自分の人生に不満を持ち、その選択に後悔しているので、他の人々も不幸にしようとしているのである」と述べた。

フィナンシャル・タイムズ紙は、この発言が「全国的な反発」を引き起こしたと報じている。英BBCによるとヴァンス氏は、米キャスターのメーガン・ケリー氏とのインタビューで、「明らかに皮肉を交えたコメントだった」と弁明。「民主党が反家族的で反子供的になっていること」を批判する意図だったと釈明に追われた。