デジタルより紙がいい脳科学的な根拠

また老眼の予防は難しいものの、今よりも少しだけ改善することはできる。カリフォルニア大学をはじめ、世界トップクラスの研究機関で効果が実証された「ガボール・アイ」は、老眼だけでなく近視、乱視、遠視などにも効果がある視力回復法だ。

「ガボール・アイとはガボール・パッチという特殊な縞模様を使った目のトレーニングのこと。この縞模様を目を凝らして見ることで、ぼやけた画像をクリアに認識できるようになるのです。目ではなく、脳に効率良く働きかけます」(同)

ものを見ることは「目と脳の連携プレー」だと平松氏は言う。目でものを見ると、網膜はその映像を信号に変換し、視神経を通じて脳の「視覚野」へ伝える。その情報がうまく処理されたとき、はじめて映像として認識されるからだ。

「脳梗塞などで脳に問題が起こると、視力が突然低下することもあります。反対に脳の処理能力が上がると、視力も回復します。ガボール・アイは脳の処理能力を上げ、持っている力を最大限使えるようにするためのトレーニング。すごく良くなるというよりは、少し便利に見えるようになるというもの。老眼、近視問わず8割の人が平均して0.2程度の視力が回復するといわれています」(同)

老眼を改善するには日ごろからそういったトレーニングをするほか、見やすい状態でものを見ることも大切だ。つまりはピントが合っているということ。まずは老眼鏡の度数の見直しを。

「ひとくちに老眼鏡といっても、見る対象によって度数が異なります。スマホなら20センチ、本なら30センチ、パソコンでは50センチにピントが合っています。何も言わないとだいたい本に合わせた老眼鏡になりますから、自分が主にどの距離にピントを合わせたいかを眼鏡屋さんに伝えましょう」(同)

次に、ものを見るときの目への負担の減らし方を知っておきたい。

「電子書籍を読む場合は、普通のモニターより、画面に印字した紙を貼り付けたようなKindleペーパーのほうが、目の疲労度が少なく、読書スピードが上がります。なぜならモニターでは高速な光の点滅で画面を表示させているため、『見逃してはいけない』と脳が勘違いをする。無意識によく見ようと集中して、まばたきが減って目の疲労や乾燥を招いてしまうからです」(同)

ボーッとしているときは1分間に20〜30回程度まばたきをするが、紙を見るときは約12回、デジタルデバイスでは約7回に減るとか。目の乾燥によって視界がぼやけたり見えにくくなると、脳の視覚野が十分刺激されず、処理能力が落ちる。「ドライアイになると年間40万円以上の生産性が落ちることがわかっている」(平松氏)というから驚きだ。