「禁止」を無視してやりたい放題の子どもたち

しかしながら、仕事で都内をあちこち見ていると、上掲の画像とは少し対照的な光景も見かける。

私が時々仕事でその近辺を訪れる23区のとある地域。そこはいわゆる下町で、言ってしまえばややガラの悪い雰囲気を残しているエリアで、そこにはいまも子どもたちが多く集まり遊んでいる広めの公園がある。その公園の周囲には古めの公営住宅が囲むように建っている。案の定、そこには大きな掲示板にずらっと「禁止事項」が書いてある。

・ボール遊び禁止
・花火禁止
・ベンチで携帯用ゲーム禁止
・集まって飲食するの禁止
・スケートボード禁止
・ローラースケート禁止
・ミニカー禁止
・モデルガン禁止

――など、覚えているかぎりのものを列挙していくとキリがないのでこの辺にしておきたいが、とにかく子どもが好きそうな遊びは徹底的に禁止禁止のオンパレードだ。もはやそこで許可されているのは呼吸くらいなのではないかといわんばかりに徹底して「遊び」を禁じている(ところがゲートボールなどで用いる高齢者向けの広場スペースはちゃっかり用意されているのがまた味わい深い)。

しかし、子どもたちはだれもそれを守っていない。

禁止事項だらけのその公園に集まっている子どもたちは、ボールで遊んでいるしねずみ花火を噴射させているしニンテンドースイッチで対戦ゲームをやりながらスナック菓子を貪り食っているしスケボー少年はスロープの手すりで思い切りトリックを決めて手すりやベンチはボロボロになっているし、とにかくやりたい放題やっている。

写真=iStock.com/SanyaSM
※写真はイメージです

子どもの数が多かった時代は跳ね返されていた

とりわけスケボー少年たちは見た目的にもかなり「ワル」な雰囲気があるため、団地に住まう高齢者は眉間にしわを寄せたり睨みつけたりしながらその場を通りすぎていくのだが、彼らに直接抗議したり文句を言ったりする人はいない。何年か前に一度だけ、その公園で休憩しているときにスケボー少年団に果敢に抗議する高齢男性を見かけたのだが「うるせえ!」と逆に一喝されてあえなく終わっていた。

結局のところ、ある種の“ヤンチャ”な子どもがその局所的なエリアにおいて圧倒的に数で上回っていれば、「~禁止!」などと言われようが「うるせえ! んなもの関係ねえよ!」とぶっちぎってしまえるのだ。

その公園はいつ訪れても子どもたちが本当に大勢いて、日本でいま少子化が深刻化していることを忘れさせてしまうくらい子どもでごった返している。このような勢力になってしまえば、その公園をどのように利用するのかを決める目には見えない「主導権」は子どもたちの側にわたっていく。

家でゴロゴロしているお年寄りが多少文句を言ったところで、なにも変わりようがない。自治体や公園管理者に「ご注進」してデカデカとした禁止事項を掲げようが、現実的なフェーズでその場所を「どう使うか」を決められるのは数で圧倒的にまさる子どもたちなので関係がないのだ。

おそらく昭和の昔も、子どもたちの遊びや集まりに対して「やかましい!」と目くじらを立てる暇な老人は一定数いたはずだ。しかしこれが大きなうねりとなって全国の公園や公共スペースが「老人優位」にならなかったのは、昔の人が寛大だったから――ではない。かつては全国どこを見ても子どもの数が多かったからだ。「そんなことをいちいち言ってもしょうがない」状況だったのだ。いくら文句を言おうが、子どもたちが数の圧力によって「うるせえ!」で跳ね返されていたのだ。