寄付額の半分しか「ふるさと」に届かない…

ふるさと納税の是正を迫られた総務省は、徐々に規制を強めてきたが、菅義偉前首相が総務相時代に肝煎りで始めた政策とあって、なかなか強硬措置を取れずにいた。

振り返ると、19年に、「返礼品は地場産品に限り調達費は寄付額の3割以下」(3割ルール)、「返礼品+経費の総額は寄付額の5割以下」(5割ルール)という「御触れ」を出し、ルールを遵守した自治体のみがふるさと納税を実施できる制度(指定制度)を導入した。

23年10月には、経費の算定基準を厳格化して、システム管理費や顧客情報管理費など「募集外(ボガイ)」と称するさまざまな経費や、自治体が発行する寄付金受領証やワンストップ特例に関わる事務費などの「隠れ経費」をすべて加えて「5割以下」とし、地場産品の基準も厳しくした「新5割ルール」の実施に踏み切った。

たとえば、寄付金が10万円の場合、返礼品の調達費は3万円以下、仲介サイトに支払う手数料や送料などを加えた総経費を5万円以下としたのだ。寄付額のせめて半分は自治体に入るようにという配慮である。

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「本気度がうかがえる英断である」

しかし、いずれも小手先の対策に過ぎず、「官製ネット通販」を本格的に抑制することはできなかった。

そこで導入したのが今回の新ルールで、ポイントで「お得感」を演出し利用者を囲い込もうとする仲介サイトの利用を禁止したのである。自治体と仲介業者との関係にメスを入れようとする試みで、過熱する「官製ネット通販」事情に水を差す効果を狙っている。

総務省は、民業である仲介業者の事業に口をはさむことは困難でも、自治体に仲介業者選びのガイドラインを提示することはできる。

松本剛明総務相は「ふるさと納税は、返礼品目当てではなく、寄付の使い道や目的に着目して行われることに意義がある」「(新ルールは)ふるさと納税の本旨にかなった適正化を目指すもの」と強調した。

本気度がうかがえる英断である。事実上、「楽天ふるさと納税」や「さとふる」の魅力をそぎ落とし、ポイントにつられる寄付者の心理を冷やす効果が確実にあるのではないだろうか。

悲鳴を上げた楽天グループが猛反発

新ルールの導入に対し、悲鳴を上げたのが仲介サイト最大手の楽天グループだった。

ライバル社が容認の構えを見せる中、三木谷浩史会長兼社長は「自治体と民間の協力を否定するもので、地方の活性化という政府の方針に大きく矛盾する」と主張、撤回を求める署名活動を始めた。「楽天ふるさと納税」のポイント利用者への呼びかけはもとより、仲介サイトに出品する自治体にも署名を強く求めているという。

背景には、ふるさと納税を基点にした楽天経済圏の広がりにブレーキがかかりかねないという危機感がある。「楽天ポイント」という集客のための強力な武器を取り上げられては、ただの仲介サイトになり下がってしまう。

一方、ECプラットフォームの巨人・アマゾンが25年春にも、仲介サイト事業に参入する動きを見せており、勢力図が激変する可能性もある。まさに「前門のトラ、後門のオオカミ」状態なのだ。

楽天グループの猛反発ぶりをみると、濡れ手にアワで手数料を稼げるふるさと納税事業は、よほどおいしいビジネスなのだろう。楽天モバイルの巨額赤字を抱える中、むざむざ手放したくないという必死の思いが伝わってくるようだ。