彼らなりのやり方と絆と信頼、そして友情

彼ら5人の仕事の時、タクヤはいつも決めるべき場所で決めてきた。生放送の放送終直前に、ボウリングでストライクを決めて最高のエンディングを作ったり。

バスケでロングシュートを決めたり、アーチェリーで最高得点を射止めたり。最後の最後にタクヤがビシッと決めて奇跡を起こしてきた。

鈴木おさむ『もう明日が待っている』(文藝春秋)

彼らはそういう時、余計な言葉を口にしない。「やってくれる」と信じるのだ。それが彼らなりのやり方と絆と信頼。そして友情。

だからタクヤが会見に出て行く時も何も言わなかった。タクヤは「頑張るのは当たり前でしょ」とよく言っていた。手を抜かない。

彼の性格をよく分かっているからこそ、何も言わずに、最高の緊張状態のまま送り出した。

そして最高の会見をやってのけた彼を、リーダーは、ゴロウチャンは、ツヨシは、シンゴは笑顔で迎えた。

僕はその言葉を聞き、後ろを向いた。涙が出たからだ。

アイドルならではの罪悪感が溶けていった

アイドル冬の時代にデビューし、先輩たちのように華々しく売れることなく、他のアイドルたちが進まなかった道を、自分たちで切り開いて進んできた彼ら。

メンバーが1人抜けて、最大のピンチを迎え、そこで5人でまた手と手を強く握ってやり遂げてきた。

そして国民的アイドルとまで言われるようになった彼らのメンバーの1人が結婚をするという、想定外の出来事。

結婚して、子供を授かって、本来なら「おめでとう」と言われるべきことがアイドルだとめでたくはなくなる。誰かのガッカリに変わる。本当だったら胸を張って「結婚しました」「子供が出来ました」と言うべきことなのに言えない。

タクヤもきっと、この日ずっと胸のどこかに罪悪感があったに違いない。だけど、仲間たちの「おめでとう」で、全てが溶けていったはずだ。

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