冒頭、格好付けずに放ったひとこと
タクヤが会見場となる場所に入ると、一斉にフラッシュがたかれた。
日本一の男が28歳で、人気絶頂の時に結婚する。それを伝えるために、想像を超える数のマスコミが集まり、その人たちの温度で会場は熱くなっていた。
黒の袖無しのシャツに黒のデニム。あくまでもカジュアルにまとめたタクヤらしいスタイルで、1人で堂々とマスコミの前に立つと、タクヤは自ら口を開いた。
「皆さんにこの場を借りて報告することがあるので報告します」
そう言うと、「えー……」という言葉のあとに、言った。
「結婚します」
格好付けることなく。ごまかすことなく。男らしく言ったその言葉と覚悟をマスコミの人たちも受け取ったように見えた。
記者たちの質問が矢継ぎ早に飛んでくる。
「出来ちゃった」ではなく「授かった」
1人の記者が一番聞きたいことを聞いた。
「おめでたという話がありますが」
それに対してタクヤは真っ直ぐに答えた。
「事実です」
記者が「4カ月ですか?」と聞くと「はい」とすぐに答える。
飛び続ける質問。
「具体的にどんな言葉でタクヤさんには報告があったんですか?」
そう聞かれると、ここでタクヤは言った。
「授かったよ」
彼からこの言葉が発されると、そのあとに、誰も「出来ちゃった結婚ですか?」などと言う人はいなかった。
別の記者が「プロポーズはなんて?」と聞くと、照れながら「恥ずかしいので」とさすがに答えを拒否したが、これもタクヤのキャラクターらしいなと思った。
そして彼は言った。
「本当はこういう場には2人でちゃんと皆さんの前に、自分たちの声で言いたかったんですが、体のこともありますので」
結婚する相手のことを気遣った。