そして、私はたしかに「お金は汚いものだ」と思っていた。父親が経営していた会社が倒産して借金の一部を肩代わりした私は、極限的な貧乏生活を経験していた。「この世に金さえなければ、こんなことにはならなかった」という思いが強かった。私はお金を汚いと思っていたどころか、恨んでさえいたのだ。

敬愛する社長の一言にショックを受けた私は、その日以来、稼いでいる社長たちのお財布を徹底的にウオッチすることに決めた。1カ月に最低でも5~10個のお財布を詳細に観察させてもらった。飲み会の席などで、「私、お財布鑑定やっていまして」などと言うと、ほとんどの社長が快くお財布を見せてくれた。

おそらくこれまでに、700個近いお財布を拝見させてもらったことだろう。お陰でいまや、一目見ただけでブランド名とお財布自体の値段を言い当てることができるようになった。

さて、こうして幾多のお財布をウオッチしてきた結果、私はある法則の存在に気づいた。それは……。

「稼ぐ人は必ず長財布を使っている」

という法則である。

人並み以上に稼いでいるビジネスパーソンで、2つ折りのお財布を使っている人はひとりもいなかったのである。

そして、稼いでいる人のお財布は、「薄い」という共通点も持っていた。無駄なカード類や領収書などが入っておらず、お札だけが入っているため、薄いのだ。

「なぜ、長財布を使うのですか?」

「だって、お札が伸び伸びできて居心地がよさそうじゃないか」