「効果の疑わしい抗がん剤」が日本や欧州では保険適用されたまま

その結果、23品目のうち15品目については、製薬会社が日本および/または欧州でも承認申請をしており、さらに12品目については今も日本または欧州のいずれかで承認されている事実を明らかにしました。

日本の規制当局である医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)には、製薬会社から合計7品目の承認申請があり、2023年4月30日時点でPMDAはその全てを承認していました。その適応の内訳は図表1に示すように種々の癌腫にわたっており、古くに承認された順から、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、イレッサ(ゲフィチニブ)、アバスチン(ベバシズマブ)、フルダラ(フルダラビンリン酸)、イストダックス(ロミデプシン)、ファリーダック(パノビノスタット)、テセントリク(アテゾリズマブ)でした。

さらに、乳がんに対する治療薬である2例は、乳癌診療ガイドラインで推奨されてしまっている始末です。テセントリク(アテゾリズマブ)については強く推奨・アバスチン(ベバシズマブ)が推奨という状況です(2022年版ガイドライン)。

(注)ファリーダック(パノビノスタット)については本邦においても2024年3月から販売が中止されました。

一方、欧州の規制当局であるEuropean Medical Agency(以下、EMA)は13品目の申請を受け、12品目を受理し、1品目を拒否しました。承認を一度受けた12品目のうち、2品目については撤退があったものの、残る10品目については2023年4月30日時点で承認が維持されていました。

長いものでは「11.5年」も市場に残っている

続いて私たちは、これら日本・欧州で承認が維持されていた医薬品が、どのくらいの間市場に出回り続けてしまっているのかを計算しました。

すなわち、米国市場からの撤退をスタートとして、各国・地域における「効果の疑わしい医薬品」の市場残存期間を算出しました。すると驚くべきことに、1医薬品あたり欧州では0.2年から11.5年(中央値1.3年)、日本では1.1年から11.5年(中央値3.2年)という期間の範囲で、これらの医薬品が市場に残り続けていることが明らかとなりました。

さらに、欧州で承認されたままとなっている10品目の市場残存期間を合計すると、26.8年であったのに対し、日本では7品目しか承認されたままになっていないにもかかわらず、その市場残存期間の合計は、36.2年間でした。

これらの期間はさらに延長する可能性があります。