「ダブルヘイター」が有権者の4分の1だった

ただし、工業地帯であり白人労働者層が多いラストベルトの3州の有権者は、経済優先、減税、ドル安を掲げるトランプ氏に比べて、法人税の引き上げ、トランプ氏主張の輸入品一律10%関税に反対のハリス氏には投票しにくい。また不法移民問題を抱える南部2州の有権者も、バイデン政権で副大統領として移民政策に取り組みながら成果を上げることができなかったハリス氏を簡単に支持するとは考えにくい。

一方、バイデン氏が候補者だったときには、トランプ氏もバイデン氏も嫌いな、いわゆる「ダブルヘイター」が有権者の4分の1を占めていると言われていた。ハリス氏は8月6日に民主党の大統領候補に正式指名されたが、この「ダブルヘイター」から得票することができるのか。また「強固な中間層を築き上げる」という経済政策において、白人労働者層がメリットを享受できるのかが問われている。

トランプ氏とハリス氏の「SWOT分析」

マーケティングでは、外部環境と内部環境をStrength(ストレングス=強み)、Weakness(ウィークネス=弱み)、Opportunity(オポチュニティ=機会)、Threat(スレット=脅威)の4つの要素で要因分析し、改善点や伸ばすべきポイント、将来リスクなどを抽出する「SWOT分析」というフレームワークがある。トランプ氏とハリス氏をそれぞれ分析すると、次のようになる。

筆者作成
筆者作成

トランプ氏の強みはリーダーシップ、大統領としての経験・実績、実業家としての経験・実績、メディアへの露出などが挙げられる。弱みとしてはボラティリティ(変動性)の高さや訴訟、スキャンダルなどが挙げられる。そうなるとトランプ氏にとってのオポチュニティ(機会)はインフレ対策、経済、グローバルでの極右への流れ、環境問題より経済優先といったことが挙げられ、分断の拡大や人権問題、環境問題がスレット(脅威)となる。

ハリス氏の強みは検事としての経験・実績やディベート力、気候変動対策、人権問題、中絶問題などが挙げられる。弱みとしてはこれまでの知名度の低さや不人気、副大統領としての実績不足などが挙げられる。オポチュニティとスレットにおいてはトランプ氏とほぼ逆転しており、環境問題や人権問題、分断の拡大がハリス氏にとってのオポチュニティとなる。