終活のおかげでわかった最愛の人の最期の望み

私たち夫婦は中尾が亡くなるまで、18年近くかけて終活をしてきました。もちろん人は予定通りに逝けません。いよいよの時が迫ってきてから終活をはじめても、きっとうまくいかなかったでしょう。

体調が悪化して気が塞いでいるときは、目の前のことで一杯一杯で、気持ちの余裕はありません。そんなときに終活を切り出したら「何を言っているんだ」と気分を害してしまうこともあるかもしれません。そう思うと、当たり前の日常を過ごすなかで、準備を進められて本当によかったと身をもって感じています。

中尾には、私がいました。しかし私には、遺言通りに私を看取って後始末をしてくれる“私”がいません。私は、いま父の言葉を噛みしめています。自分しかない――父の言葉通り最後は、やっぱりひとりなんだな、と。

だからと言って、死に怯えるような生き方はしたくありません。そんな人生、つまらないじゃないですか。

ひとりの人生を楽しむためにも、できることは、やれるうちにやったほうがいい。それも中尾と終活に取り組んだから、わかったことです。

遺言を残す。介護が必要になった場合に備え、支援制度や施設を調べておく。信頼できる人にあらかじめお願いしておく。いつ何があってもいいように、身軽にしておくことも大切です。

最愛の人を失った寂しさや喪失感は、終活をする、しないにかかわらず、変わらなかったでしょう。ただ、もし終活をしていなかったとしたら……いまよりも、もっと深い後悔にさいなまれていた気がします。

終活のおかげで、中尾が人生の最期に何を望んでいるかわかりました。わかったからこそ、彼が望む形で、看取ってあげられました。だから、喪失感や寂しさはあれど、落ち着いた心境で中尾の死を受け止め、いまを過ごせているように感じるのです。

(構成=山川 徹)
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