金のない若者より、金のある中高年を狙う
最近までは、企業のマーケティング活動では「Z世代」が注目を集めてきた。彼らは、上の世代とは異なった新しい消費行動を取っているが、次世代の消費リーダーとなることが期待されてきた。SNSの利用も活発で、情報波及力も高い。
一方で、Z世代の可処分所得は少ない。消費行動、情報接触行動が細分化しており、マスマーケティングが通用しづらいという特徴もある。
昨今の株高で恩恵を受けているのは、金融資産の額が高く、投資人口も多い中高年層が中心である。また、大手企業の社員はボーナス増の恩恵も受けている。消費を牽引していくのも、若年層よりはその親世代になっていくだろう。
マクドナルドの「I feel Coke」は、当時のコカ・コーラのCMとは違って若者やファミリーも描かれており、単純に中高年層を狙っているとは言い難い。しかし、2023年初頭の同社の「アジアのジューシー」のCMが若年層を中心に訴求していたことと比べると、ターゲットとする年齢幅が広がっていることは間違いない。
SNSの話題を見ていても、このCMを知っている世代の口コミが目立っていた。
中高年層の消費が日本経済の活性化につながる
2024年は、1998年に放映されたドラマ「GTO」の新作が放映されたり、中森明菜さんが歌手活動再開に向けて本格的に動き出したり、1980年代の流行ドラマ「あぶない刑事」の新作劇場映画が公開されたりという動きも見られる。これらは、当時リアルで楽しんでいた人がメインターゲットとされているように見える。
これまでの「レトロブーム」は、当時を知らないZ世代が新鮮さを感じることで受容されてきたものが多かった。これからは当時を知っている30代後半以降の世代が、過去を懐古するようなものがより多くなっていくのではないかと思う。
思い返すと、1970代の若者を中心とするサブカルチャー、カウンターカルチャーがあり、その後に1980年代バブル経済によって大人が消費社会の中心となった。その後のバブル崩壊により、1990年代後半から再び若者文化が活発化し、現在そのリバイバルが起きている。そろそろ次の節目が来ているように思える。
バブル経済はもう戻ってこないかもしれないが、当時の流行は再び戻ってきて、多少なりとも中高年層の消費を刺激し、多少なりとも日本経済を活性化させてくれるのではないか。そして、そこから新たな「大人の文化」も生まれてくるのではないだろうか。
筆者は、そのようなささやかな期待を抱いている。