美しかったサンフランシスコの街は激変した

かつて世界に名だたる街として知られ、日本からも多くの観光客が訪れた米西海岸のサンフランシスコが、このようにパンデミック後に様子を一変させた。アルコール中毒者やホームレスの人々が街にあふれ、安全に通勤できない状態にまで窮地に立たされている。車を少し駐車していただけでも窓を割られるほどに治安は悪化してしまった。

写真=iStock.com/Marc Dufresne
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テック産業の集積地であったサンフランシスコだが、パンデミック中に業界が積極的にリモートワークを推進したことで、街の実店舗売上が減少。結果として経済は急速に衰退し、治安が悪化した。

また、同州の独特な州法にも批判が集まる。盗みが950ドル(約14万円)以下であれば軽犯罪とされる規定だ。この法が堂々とした窃盗行為を助長しており、治安をさらに悪化させているとの声が聞かれる。

非営利研究機関のカリフォルニア州公共政策研究所(PPIC)によると、パンデミック前の2019年比で万引きの発生割合がマイナスとなるカリフォルニアの地域もあるなか、サンフランシスコ地域は24%の増加を記録している。PPICは「全米の高級店におけるいわゆる窃盗事件が頻繁に全国的な見出しを飾り、特にサンフランシスコでは、万引きが一因と見られる小売店の閉店が相次いでいる」と指摘する。

タコス店は何度も強盗に押し入られ、客足は半減

かつてサンフランシスコで繁盛するタコス料理店を2店営んでいたというデイビッド・リーさんは今年、治安悪化でやむなく閉店を決断した。何度も強盗に押し入られ、店舗の破壊行為もひどかったという。コロナ以降、遠のいた客足も追い討ちをかけた。

米大手経済紙のウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し、リーさんは語る。

「ビジネスを始めたばかりの頃は、(売上は)ランチタイムは平均3000ドル(約45万円)、ディナータイムも3000ドルほどで、1日6時間しか営業していませんでした。短い時間です。それが今年に入ってからは、1日平均1000ドルから1500ドル(約15万円から23万円)くらいになってしまったのです」

不況にあえぐのは、リーさんだけではない。街全体の様子が様変わりした、と彼は語る。

「その昔、ここは一番にぎやかな通りでした。昔は繁盛していたのに、今は通勤通学で歩いている人は誰もいません。悲しいことです」