14歳の若者を雇い、万引きをさせるケースも
小売店を苦しめる強盗や万引きは、個人の衝動に留まらず、組織犯罪として行われている例がある。街角でのサプライズ「フラッシュモブ(flash mob)」になぞらえ、集団で店に押し入りいっせいに窃盗する行為は、「フラッシュロブ(flash rob)」とも呼ばれる。
地元紙のサンフランシスコ・クロニクルは昨年9月、ティーンエイジャーたちを率い、フラッシュロブを何度も実施した女の事例を報じている。
記事によるとサンフランシスコ警察は、組織的な万引き事件10件に関与した疑いで、24歳の女性を逮捕した。警察によれば、これらの事件で盗まれた商品の総額は約4万4000ドル(約670万円)にのぼる。
女は8人ほどの共犯者とともに店内に入り、商品を盗み出したほか、63歳の男性に暴行を加え、重傷を負わせた疑いが持たれている。
この件の捜査の過程で、女が一連の組織的な窃盗事件に関与していたことが発覚した。うち、ある事件では、最も若くて14歳という若者たちを雇い、ともに商品を盗み出したとされている。暴行と窃盗に関連した34の疑いで刑務所に収監され、裁判に臨むことになる。
若者を利用して盗みを繰り返す窃盗組織
USAトゥデイ紙は、再販売目的の組織的な窃盗が増えつつあると指摘する。業界団体の全米小売業協会(NRF)が2020年に出した報告によれば、組織的な小売犯罪による損失は10億ドルの売上あたり約71万9548ドルを占めていた。
英フィナンシャル・タイムズ紙はアメリカの例として、犯人たちが集団で雇われ、商品が再販目的で売りさばかれてゆくと報じている。
見かけは単独で万引き行為に走る若者であっても、その実態は商品を盗み、盗品仲介人(通称「フェンス」)へと流すことを任務とする子供たちなのだという。こうした子供たちは「ブースター」と呼ばれ、犯罪組織の末端にすぎず、ごくわずかな収益しか得ていない。
治安の悪化は伝染する。このような組織犯罪に加わる若者がサンフランシスコでは増えており、ホームレスなども組織末端の「ブースター」に加わることで、一層の環境悪化が懸念されている。
被害額14万円以下は“お咎めなし”の誤解
万引きはなぜ絶えないのだろうか。サンフランシスコ現地では、2014年に住民投票で承認されたカリフォルニア州法の「修正案47(Proposition 47)」が一因との声が聞かれる。窃盗を矮小化するこの修正案は、「万引きは許されている」との誤解を招いた。
この修正案は、被害額が950ドル(約14万円)以下の窃盗を、軽犯罪に位置づけるものだ。USAトゥデイ紙は、店舗の従業員がこうした窃盗犯を制止することが州法で禁じられた――との誤解さえ生んだ、と指摘する。
もちろん万引きが公然と認められたわけではない。同法では、価値が950ドル以下の商品を盗む意図で営業時間中の店舗に侵入した者は、軽犯罪となる。最大半年の懲役または1000ドル(約15万円)を科すというものだ。