シートベルトの有無が生死を大きく分ける

この事故では事故直後も判決が出されたあとも、医師に対する激しい糾弾の声ばかりが上がっていて少々違和感を覚えている。なぜなら数々の報道を見ても、孫にベルトをさせていなかった祖父の過失について触れたものは皆無。これではまた同じような死亡事故が起きる可能性が十分にある。

避けられない事故だったとしても、ベルトを正しく着用していれば少なくとも車外に放り出されて死亡することはなかっただろう。

たとえフェラーリが制限速度の50km/hで衝突した場合でも、ベルトなしの乗員は想像以上に簡単に車外放出されてしまう。公益財団法人交通事故総合分析センターの調査でも、車外放出による死亡事故は時速40km/h程度の衝撃でも起こりうるとしている。車外放出を防ぐにはシートベルトの適切な使用が最も有効であることは言うまでもない。

後部座席でシートベルトを着けていない場合の致死率は、高速道路で着用時の約25.9倍、一般道路で着用時の約3.3倍も高い(警察庁ホームページより)

身長150cmまではジュニアシートを使うべき

また、一般道路であっても後部座席であっても、ドライバーにはすべての乗員にシートベルトを適切に装着させる義務がある。

一般道では高速道路のような罰則(違反点数1点)がないため勘違いする人も多いのだが、ベルト着用義務は一般道でも全席にある。ただし、子どもの場合、身長145~150cmを超えるまではジュニアシートの使用がマストだ。

ベビーシート、チャイルドシート、ジュニアシートを使う子どもの身長の目安(JAMAホームページより)

シートベルトが正しく使える身長は車によって多少は異なるが、日本の自動車メーカーは全社、身長150cmのダミーを使ってシートベルトと衝突安全性の検証を行っているので、それ以下の身長では安全性が確認されていないことになる。それゆえ、自動車メーカーは全社、身長150cmまで使用できるジュニアシートを純正オプションとして用意している。

筆者提供
ジュニアシートの例