「イメージと違うんだけど」の文句が多発! システム開発業界

特徴

完成物がない状態から契約が始まるため、顧客との間に認識のズレが生まれやすい。納期を守るため、契約内容が固まらないまま先走り的に着手するケースも多く、それが後にトラブルの種になることも。そして受注側と発注側の知識レベルに差があるため、発注者の要望を実現するためのプロセスや予算について、発注者側が正確にイメージすることが難しい。

また、発注者側が優位に立つケースが多く、トラブルが開発途中で発生し、追加契約や仕様変更が必要な事態もしばしば生じる。「イメージと違う」といった抽象的なクレームで、延々とやり直しを求めるようなカスハラの事例もある。

対応策

「システム開発に関するクレームの多くは、契約内容が不明瞭であることから生じています。受託業務の範囲をきちんと定めるとともに、トラブル発生時の損害賠償や発注者都合の中途解約について、受注側が不利にならない条項を盛り込んだ契約書を早期に締結することが大切です。

要件定義を明確化し、図なども使って着手前に発注側と受注側の認識ギャップを極力埋めること、口頭で交わした合意は速やかに合意書などの書面やメールなどの客観資料にして保存しておくことにも留意してください」(同)

住民の怒りが一極集中する「クレームのるつぼ」 マンション管理業界

特徴

管理人・管理会社に対する住民からのカスハラが多発している。集合住宅ゆえの騒音トラブル、区分所有者同士の対立や文化の違いなどが、管理会社にクレームの形で持ち込まれる。分譲マンションの場合、一度購入すると簡単には離れられないことも、住人の怒りやストレスを増幅しがちだ。

管理委託契約の締結相手は個々の住民ではなくマンションの管理組合だが、住民が管理人のもとに怒鳴りこむような事例も少なくなく、クレームの申し立てが長期間に及ぶことも。

対応策

「管理会社と管理契約を締結しているのは管理組合であって、個々の区分所有者ではないこと。また、管理事務の対象となるのは共用部分などで、上下階の騒音問題のような専有部分のトラブルは対象外であること。こうした管理委託契約の内容を改めて管理組合と確認し、対応方針を共有しましょう。

2023年9月、国土交通省は管理委託契約書のひな型『マンション標準管理委託契約書』の改訂を行いました。管理会社への業務の指示は管理組合を通じて行うことが明記されたほか、カスハラ行為の禁止を定める条項も追加されました。新たに管理委託契約を結ぶ場合、あるいは契約を更新する際に、このひな型をぜひ上手に活用してください」(同)