上層部に味方を作り自分の案を通させる

先ほども言いましたが、ダークサイド・スキルの「その1」は味方を作ること。あなたが中間管理職であれば、まだ大きな権力は握れていないため、経営会議などで自分の案を支持してくれる人を作っておく必要があります。

やはり権力側で一緒に戦ってくれる人がいないと、なかなか「討伐運動」はできません。社内の権力作用構造がどう働いているかを観察し、ダメ上司に対して物を言えるのは誰かを見極めましょう。社長を味方につけることができればベストですが、ダメ上司と同等の権力を持つ人、あるいは斜め上の人でもOKです。

味方は社内の人とは限りません。メインバンクや金融機関の人にこっそり話をして、「外部から厳しい意見を言ってもらえませんか」と頼んでみるのもアリ。あるいは部下のいない部長など、社内の保守本流ではなく、普段は目立たないけれど、周囲の人間関係や立場を熟知しているような人を味方に引き入れておくのも有効です。「たぶんこの人が、こういうことを言ってくる」「その背景にはこういう事情がある」というようなことを全部教えてくれるケースもあります。

2つ目は、ボトルネックになっているダメ上司が、「なぜそんなことを言うのか」を理解すること。

人間は「自分が正しい」と思うと反射的に「相手が間違っている」と思ってしまいます。特に若い人は、「正しいことを言っているのに、なぜわかってくれないのか」と腹を立てることもあります。しかし現実には正義は一つではなく、相手には相手の正義があるはず。共感する必要はないけれど、相手のロジックは理解しておきましょう。また相手のメンツをつぶさず、花を持たせるところは持たせてあげるような割り切りも必要です。

3つ目は、会社の規模にもよりますが、社長に直談判することです。ひと昔前の社長は昨日の延長上の「改善改良型」の経営をしていればよかった。ところがいまの社長は「改革型」の経営をしなければならない。切った張ったの経営判断の連続です。厳しい経営環境のなかでどう生き残っていくかを真剣に悩み、考えている人が多いから、現場の声を大事にする傾向があります。

ただし、それはCEO本人だけで、経営陣のなかには前述のような、自分の出世しか考えていないダメ上司タイプもいます。その人たちに提案を握りつぶされないように、ホットラインで社長に耳打ちするのも効果的でしょう。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

(構成=長山清子 撮影=大崎えりや)
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