園庭がない保育園の保育士の負担は大きい

事故が起こらなければ詰め込んでもよいという考え方では、あまりにも貧しすぎる。私は、雨の日に訪れたある園で、子どもたちがそれぞれの遊びをするスペースがなく、時間を持て余して保育士にまとわりついている姿を見たとき、これでは保育所保育指針の求める保育はできないと感じた。

保育所保育指針では、子ども一人ひとりが好きな遊びをする中で、心身の機能を自ら用いることによってその発達が促されることを繰り返し説いている。前述の「機能面に着目した保育所の環境・空間に係る研究事業」が示した推奨値に、遊びに必要な面積を加えたらもっと広い面積になるはずだ。

子どもたちが遊びに集中できる環境があれば、保育士の負担も軽減される。しかし、待機児童問題が深刻になる中で、そんな現場の状況が理解されない時代が続いてきた。

そもそも2歳以上の保育室面積基準一人当たり1.98平方メートルは、2歳未満児よりもさらに狭い。その代わり園庭(屋外遊技場)を一人当たり3.3平方メートル確保しなければならないことになっている。基準設定当時は、幼児は外遊びをする時間が長いから園庭を確保できれば室内は狭くてもよいと考えられたのだろう。

しかし、おそらくその頃と比べて保育時間は長くなり、室内で過ごす時間が多くなっているはずだ。子ども一人当たり1畳強の広さというのは、どう考えても狭い。そのスペースに保育士もいるし、家具や道具も置かれる。しかも、保育室の狭さを補うはずの園庭が、待機児童対策のために削られている。

2001年に国が、屋外遊技場(園庭)は近くの公園等で代替してもよいという通知を出してから、雑居ビルや空き店舗に設けられた、自前の園庭をもたない認可保育園が都市部で急増することになった。このことも保育士の負担を大きくしている。

「園庭があるかないか」の大きな差

保育室が手狭な施設では、園庭が救いになる。晴れていれば、いつでも園庭を使って子どもたちに外遊びをさせることができるからだ。幼児にとって外遊びが重要であることは言うまでもない。思いっきり身体を動かして基礎的な運動神経を発達させる時期であり、また自然を五感で感じたり、土や動植物にふれたりする体験は、認知面・情緒面の育ちを促す。

もちろん、園庭がなくても近くに公園があれば、そこに散歩に出かけることができる。園庭がある園でも、違う環境を求めて、地域のあちこちの公園に散歩に出かけている園もある。ただし、外の公園等に出かけるためには、安全のため保育者が多めにつく必要がある。クラスの中に体調が悪く散歩に行けない子どもがいれば、残る保育者も必要となるため、散歩を断念しなければならないこともある。

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