※本稿は、普光院亜紀『不適切保育はなぜ起こるのか 子どもが育つ場はいま』(岩波新書)の一部を再編集したものです。
共働きの増加で保育の規制が緩和
2000年代に入ると、雇用者世帯における共働き世帯と専業主婦世帯の比率が逆転した(図表1)。国が予言したとおり、共働き一般化へと人々の暮らしは大きく変化していった。当然、保育ニーズは急増する。児童福祉法改正直後から、保育の量的拡大を助けるため、認可保育園に関する基準が次々に緩和されていった。
待機児童問題への対策としては、まず「定員超過受け入れ」が行われた。「定員超過受け入れ」とは、面積基準を下回らない範囲で定員を超過して子どもを受け入れてよいという国による規制緩和だ(面積基準は非常に低いので、通常は面積基準よりも広い面積を子どもに提供できるように定員設定がされていた)。最初は、年度後半に限って認められ、その後、年度当初からの超過も認められるようになった。
こうした受け皿の拡大のために、それまではすべて常勤であることが求められていた保育士配置に2割までパート保育士の導入が認められ、これもすぐに「各クラスに常勤が1名いればよい」とさらに緩和された。
園庭は近くの公園で代用OKに
株式会社やNPOの認可保育園への参入が認められると、その参入を助けるために、雑居ビルや空き店舗などの賃貸施設での設置が可とされた。園庭に関しては従来の基準でも必須ではなかったが、ほとんどの認可保育園が園庭を備えていた。国は新設しやすくするため、改めて「園庭は近くの公園を代替してもよい」ことを通知した。これを受けて、新規参入事業者の多くが、雑居ビルなどに認可保育園を設置する流れとなっていく。
折しも、構造改革の名のもとあらゆる分野の規制緩和や民営化が推し進められていた。「共働き一般化」に向かおうとする社会の変化と相まって、大きな変革の波が保育の世界に押し寄せていた。