正社員になれる人はすでになっている
この事例でもわかる通り、社会状況を緻密に読み解く努力をおざなりにし、なんでも「氷河期」で片づけすぎている。それが続くことで、実体以上に氷河期被害が人々の心の中で幅を利かし、ここに政策資金が集中する。そうして、その多くが無駄になっている。
連載の冒頭に書いた「就職氷河期世代支援プログラム(3年間の集中支援プログラム)」は、当時審議員だった私の反対など何の足しにもならず、1000億円単位の予算が付いた。
その無駄金で催される「氷河期世代向けイベント」に、皮肉なことに私が呼ばれることが多々あった。
イベントでは顔見知りのキャリアコンサルタントやサポステ職員から声をかけられる。
そして皆、決まり文句のようにこう話す。
「氷河期世代向けにやることなんて、もうありません。なれる人はすでに正社員になっていて、これ以上は無理です。ほかにお金を使ってもらいたいことは、たくさんあるのに、氷河期ばかりに目が向けられて……」。