おりがみで4つの認知機能が鍛えられる

【西】もうひとつ、2020年におりがみについての論文が出ましたので紹介しておきましょう。おりがみは科学的に見ると4つのプロセスに分けられます。

「説明書きを読む(リーディングプロセス)」……言語機能を使う。
「意味を構築する(リフォーミュレイティング)」……言葉の意味を頭の中でイメージして折る。
「再概念化(リコンセプチェライジング)」……2次元を3次元に変換する。説明書き(2次元)を見て、頭の中で立体的にイメージ(3次元)すること。
「評価する(エヴァリュエイト)」……頭の中で、できたものと説明にあるものが一致するか確認する。

科学的に見ると、おりがみを折ることは、この4つの認知機能を使っている。つまり、おりがみの本や折り図を見ておりがみを折るのは4つの機能のトレーニングを同時にしているようなものともいえます。伊達さんは毎日おりがみを折っていますよね?

【伊達】はい、時間を見つけては折っています。最初はおりがみの本を買っては折っていましたが、いまはもっぱら動物の写真集を見ては、こういうふうに折ろう、ああいうふうに折ろう、と考えている時間がほとんどです。

【西】なるほど。脳が若々しいと感じる理由がわかったような気がします。

脳は「生きがいに」によって若返る

【西】最後に、脳は何歳になっても若返るというお話をしておきましょう。アメリカのラッシュ大学で発表された「生きがいのある人」は脳が萎縮しても認知機能が高い、という有名な研究結果があります。この研究は250人の高齢者を10年調査し、亡くなったときにそれぞれの脳を解剖したものです。

その研究では、生きる目標がなかった人に比べ、生きる目標があった人は、アルツハイマーの病変があったとしても高い認知機能を維持していた、ことがわかったのです。

見た目はアルツハイマー病と診断するような病変があったけれども、認知機能を調べてみると、結構高かった、というケースです。

【伊達】アルツハイマーなのにボケていなかったということですか?

【西】その通りです。少し専門的な話をすると、β-アミロイド(脳で作られるタンパク質の一種)が排出されずに、脳の中にたまってしまうと、健康な神経細胞やシナプスを傷つけ死滅させるため、脳が萎縮します。その結果、アルツハイマーになるといわれます。しかし、生きがいのある人は、脳が萎縮しても、高い認知機能を保っていたというわけです。これ、なぜだと思いますか?