「挨拶しない人」は“二重の意味で泥棒”とみなされる

実際のところ「笑顔でハキハキ挨拶」する人もそうしない人も、新人や若手なら客観的数字だけを見れば給料泥棒であることには変わりない。しかし周囲の人から見て、前者のことを「給料泥棒」と感じる人はかなり少ない。むしろ「これから楽しみな人」とポジティブに評価されることの方が多い。なぜなら彼は「売上以外の部分で頑張ってくれている」からである。

しかし「挨拶しない人」は、「売上以外の部分で頑張ってくれている」ような印象は持たれないし、挨拶しない人間がいるということで悪くなる職場のムードのメンテナンスコストを他のメンバーに転嫁しているという点も考慮すれば、その人は二重の意味で泥棒なのである。給料を泥棒するだけでなく“気持ちの泥棒”をする人間とも見なされる。

挨拶は共同体への「贈り物」である

これから働く若い人から「どういう勉強をしたらいいですか?/スキルを身に付けたらいいですか?」といった相談をしばしば受ける。

私はそうした相談には「とりあえずジョギングして体力をつけ、笑顔でハキハキ挨拶できるよう、腹から声を出す練習をするといいですよ」と答えるようにしている。小手先の資格やスキルを磨くよりも、その方がずっと効用が大きいと考えているからだ。むしろハキハキ挨拶もしないうちから資格勉強をいきなりやりはじめると、輪をかけて自己中心的な人間だと思われてしまいかねない。他人のコストやリソースを取っているくせに良いご身分ですねえ、と。

職場だけでなく、学校でも趣味の集まりでもなんでもそうだが、自分が属しているコミュニティにおいて笑顔でハキハキ挨拶することは、たんなる社交辞令ではない。それは「贈り物」なのである。

写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです

共同体というのは、当たり前だがその共同体の内部で生産されるリソースより消費されるリソースが上回ってしまえばいずれは崩壊する。それは物的リソースもそうだが、心理的リソースも同じことだ。心理的リソースつまり「共同体の雰囲気や協調性」がマイナス超過になってしまえば、その共同体はメンバーの忠誠心が維持できずに分裂したり離反を招いたりして破綻してしまうのだ。