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まず「関心度」調査は内閣支持率とは違うことを明確にせよ

確かに今は批判の嵐が吹いていますね。ただ、僕が出演しているフジテレビ系の報道番組「日曜報道THE PRIME」でも番組独自の視聴者調査を行いましたが、その結果、27%が「ぜひ行きたい」、23%が「見どころあれば検討する」、50%が「行きたいと思わない」という結果になりました。つまり国民の約半数が濃淡はあれど、大阪万博に関心を持っているということです。

実はこれは考えてみると、すごいことですよ。仮に世界的なアーティストが来日コンサートを行ったとしても、国民の半数が関心を持つことなど、まずありませんからね。万博には「あえて見に行く」催し物としての性格があります。その点から見たら、関心を持つ人が「約半数」という数字は決して少なくありません。

僕たちはつい、内閣支持率の数字と比較して「せめて6割くらいの支持がないとまずいのではないか」と考えてしまいがちですが、内閣支持率と万博への関心は根本的に違います。ふつう内閣支持率は30%を切ると「危険水域」とされ、現在の岸田文雄内閣はその水域にありますが、そもそも国民全員が当事者であり民意に基づいて運営するのが国政です。支持率が30%ではその前提が崩れてしまうのです。

一方で、万博のような催し物は興味のある人が足を運ぶものであり、その意味で対象は「全国民」ではありません。少なすぎれば事業として成り立たないけれど、約半数の人が関心を持っているということは、いい数字だと評価するべきではないでしょうか。

写真=iStock.com/EvergreenPlanet
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この点、「税金を使っているのだから全国民のことを考えろ!」「関心を持っている者だけを対象にするなら、そいつらの金でやれ!」「国民全体の税金を使うな!」というヒステリックな批判がありますが、そもそも政治行政の政策というものは、ありとあらゆるものが全国民に関心を持ってもらっているものではありません。

ある元市長も「税金を使うな!」と批判していますが、その元市長も自分の市政においては一部の者しか関心を持っていないイベントに多額の税金をジャブジャブ投じているんですよね。自分がやっている事業は何ら問題ないが、他人がやる事業は許されないという典型的な身勝手な批判です。

後で詳しく述べますが、大阪万博の経済効果は3兆円超! またここに集まる技術は日本の課題だけでなく世界の課題を解決することにつながります。すなわち万博に来場しない人へも利益が還元するわけで、だからこそ一部税金を使わせていただくのです。

「国民全員が参加しないなら税金を使うな!」なんてこと言っていたら、何の政策もできませんよ。くだんの元市長には頭を冷やしてもらいたいですね。

そもそも2021年に開催された東京オリンピックを振り返ってみても、開催直前までは非難ごうごうでしたし、1970年の大阪万博も開催1年前の時点では否定的な意見が強かったようです。でも、いずれもふたを開ければ大盛況。日本でこうした大型イベントを開催する際は、開催直前まで世論は批判モードで、開催後に盛り上がるのがお決まりのパターンなのかもしれませんね。

そしてもうひとつ、万博には催し物としての性格とは別に、開催を通じて実現するべき意義や大目的があるということを忘れてはいけません。

今回の万博に関しては、政府主導のメッセージが弱かったり、誰が責任者なのかも曖昧だったりするという問題があります。言い出しっぺの僕の後継として大阪府の吉村洋文知事が批判の矢面に立ち、一生懸命メッセージを発してくれていますが、万博とは本来、国家が主催する国際イベントです。大阪は確かに招致のために力を尽くしましたが、開催が決まった以上は一国のリーダーが、堂々と万博の意義と成功を国民に語りかけるのが筋ではないでしょうか。

最初に触れたとおり、万博には催し物としての性格もありますが、とはいえテーマパークやスポーツイベント、音楽イベントなどとは異なります。万博とは本来、人類が成し遂げた技術の粋や知識を世界が持ち寄り、未来展望を共有するための場。そして25年大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。世界中の課題を持ち寄り、解決の糸口を探るためのプラットフォームを目指すのです。

前回の大阪万博の背景には戦後復興があり、世間は高度経済成長に沸いていましたが、21世紀の現代は違います。日本は少子高齢化・過疎化・人手不足に悩み、一方で世界の中には人口過密や紛争、水不足や食糧難にあえいでいる国も多い。そうした課題に対して、僕らは先端科学や医療技術を活用できるはずです。